一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題ポスター

症例・施設

症例・施設

2018年6月23日(土) 09:30 〜 15:30 ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-096] 多職種連携で歯磨き指導を行った脳卒中患者の1症例

○二宮 静香1、平塚 正雄1、髙倉 李香1、松尾 佑美1、熊丸 優子1、山口 喜一郎1、原田 真澄1 (1. 医療法人博仁会 福岡リハビリテーション病院歯科)

【目的】
 脳卒中患者では脳卒中発症後,早期からの生活再建に向けた歯科支援が必要になる。そのためにはリスク管理や歯科衛生過程,多職種連携が大切である。今回,多職種連携により歯磨き指導に取り組んだ症例を経験したので報告する。
【症例および処置】
 63歳,男性。右視床出血にて左側片麻痺,高次脳機能障害などが認められた。口腔所見では口腔乾燥,麻痺側の歯肉炎などが認められた。右手による歯ブラシの把持や歯磨き動作は保たれていたが,左側空間無視などが認められた。多職種と連携し,入院早期からのベッド上での鏡を用いた視覚的フィードバックによる歯磨き指導と口腔ケアによる知覚入力に取り組んだ。起立性低血圧が改善し,離床可能後には洗面台で歯磨き指導を行った。車椅子姿勢は左片麻痺の影響により上体が麻痺側の左側へ傾くため,足底接地と麻痺側上肢を洗面台に乗せることで上体を安定させ,健側の右手による歯磨き動作が行いやすい姿勢に調整した。左側空間無視の影響により右側からの視覚情報や人の動き,声などに反応して注意散漫になるため,右側からの視覚情報をカーテンで遮断し,歯磨き指導に集中しやすい環境を設定した。その後,上下顎麻痺側部位の歯磨き動作も全介助から一部介助,見守りまで改善し,歯肉炎を改善することができた。
【考察】
 脳卒中患者の歯磨き指導では,患者本人や介助者への口腔内の清潔度を意識した指導のみに捉われがちであるが,運動機能や高次脳機能の障害が認められる症例では,作業療法士などとの多職種連携によるアプローチが歯科支援に有益と思われた。