一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

課題口演

課題口演 高齢者の口腔機能管理・口腔衛生管理

高齢者の口腔機能管理・口腔衛生管理

2018年6月22日(金) 09:30 〜 10:45 第2会場 (1F 小ホール)

[課題1-4] 剥離上皮膜の形成時間
―粘膜ケアのタイミングの検討―

○松村 康平1、宮原 康太2、小柴 慶一3、望月 慎恭2、島田 勝光4、落合 隆永4、島田 茂5、長谷川 博雅4、岡田 芳幸2、柿木 保明6、小笠原 正2 (1. 松村デンタルクリニック、2. 松本歯科大学障害者歯科学講座、3. こしば歯科医院、4. 松本歯科大学口腔病理学講座、5. ちむわざ歯科、6. 九州歯科大学生体機能学講座老年障害者歯科学分野)

【緒言】
 経管栄養の要介護高齢者では,口腔乾燥により剥離上皮膜が形成されることがある。しかしながら,剥離上皮膜の形成時間は,明らかになっていない。剥離上皮膜の形成時間が明らかになれば,粘膜ケアのタイミングが明らかになると思われる。そこで今回,継時的に口腔内の状況を確認し,剥離上皮膜の形成時間について検討したので,報告する。
【対象及び方法】
 調査対象者は沖縄県内の特別養護老人ホーム3か所に入所中の経管栄養の要介護高齢者8名(80.1±7.7歳)であった。調査方法は,調査初日に剥離上皮膜の確認を行った後に剥離上皮膜を完全に除去した。そこから3時間後,6時間後,12時間後,24時間後,48時間後の計5回にわけてそれぞれ口腔内の剥離上皮膜が形成されているかを確認し,口腔内写真の撮影と検体の採取を行った。剥離上皮膜の形態を,不透明で粘稠性のないものを膜,ピンセットで除去する際に粘度が有り不透明なものを粘調膜,透明な粘稠性液あるいはゼリー状のものを粘液とした。
【結果】
 6時間後に50%の者に粘調膜が確認できた。24時間後には粘調膜を有する者が75%おり,その中の半数に膜として形成されている者も確認された。また,12時間後で膜状の剥離上皮膜を有する者が1名確認された。
【考察および結論】
 乾燥した層状の剥離上皮膜を除去するのは容易ではなく,その除去には出血を伴う場合もある。今回の調査では24時間後に剥離上皮膜が現れていたが,粘調のものが時間経過によって層状へと移行し,剥離上皮膜になる経過がみられた。除去は容易に行える粘調膜の状態で行うのが妥当と考えられる。よって剥離上皮膜形成予防のためには,6時間以内での粘膜ケアが必要であると考えられた。