一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題口演

口腔機能

口腔機能

2018年6月23日(土) 11:30 〜 12:00 第3会場 (6F 大会議室)

座長:吉田 光由(広島大学大学院医歯薬保健学研究科先端歯科補綴学)

[O2-12] 86歳の地域高齢者における口腔機能低下症の実態

○佐藤 仁美1、三原 佑介1、福武 元良1、八田 昂大1、猪俣 千里1、武下 肇1、榎木 香織1、松田 謙一1、池邉 一典1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野)

【目的】
 口腔健康管理によるフレイル予防のために,日本老年歯科医学会は2017年4月に口腔機能低下症の定義と診断基準について公表した。しかしながら,その根拠とされる研究では,要介護高齢者や歯科治療中の患者を対象としたものもあり,後期高齢者の全体像を必ずしも反映しておらず,生理的老化も考慮されていない。そこで,本研究は86歳の地域高齢者における口腔機能低下症の実態について検討することを目的とした。
【方法】
 85-87歳の地域高齢者528名を対象とし,口腔機能低下症の評価に用いられる7項目の口腔機能のうち,咬合力,咀嚼機能(スコア法),舌圧,舌口唇運動機能,嚥下機能(EAT-10)の5項目を計測し,中央値(四分位範囲)を算出した。日本老年歯科医学会が提唱した診断基準を基に,各項目の低下群の割合を算出した。さらに3項目以上が低下群であった場合を口腔機能低下症とし,その割合を算出した。
【結果と考察】
 それぞれの口腔機能の中央値(四分位範囲)は,咬合力は153 (59-296)N,咀嚼機能スコアは3 (1-6),舌圧は25.0 (19.7-29.8)kPa,舌口唇運動機能は,パ音は5.6 (4.8-6.2)回,タ音は5.4 (4.6-6.0)回,カ音は5.0 (4.2-5.6),嚥下機能は0 (0-1)であった。咬合力は57.8%,咀嚼機能は52.7%,舌圧は72.9%,舌口唇運動機能は87.3%,嚥下機能は6.8%が低下群となり,項目によって大きな差がみられた。さらに66.3%が口腔機能低下症であった。
 本研究の結果より,各評価項目の正常値や診断基準については,年齢や生理的老化を考慮に入れて,今後更なる検討が必要と考えられる。