一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題ポスター

症例・施設

症例・施設

2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-109] 初診時に診断的治療として禁食としたことが経口摂取の再開に繋がった症例

○内田 悠理香1、野原 幹司2、阪井 丘芳2 (1. 大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部、2. 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能治療学教室)

【緒言】
 嚥下診察では,嚥下機能だけでなく全身状態を評価することが治療方針の決定において重要である。今回,初診時に重度の誤嚥と肺炎を認めた患者に対して診断的治療として禁食を指示した結果,経口摂取の再開が可能となったので報告する。
【症例】
 83歳男性。2009年に下咽頭癌,2010年に食道癌の化学放射線療法を受けた。常食を摂取していたが,2016年3月に誤嚥性肺炎・膿胸で入院した。誤嚥リスクが高いと判断され同年4月に胃瘻造設された。少量の経口摂取を続けていたが5月に肺炎を再発した。その後も少量の経口摂取を行っていたが食事再開を希望し,7月に当院受診した。
【診断および経過】
 初診時は呼吸の乱れを認め,体温:38.2℃,SpO2:95%,簡易CRP値:11.0mg/dlであった。VEでは唾液とトロミ付き水分の誤嚥を認め喀出困難であった。本人は倦怠感などの自覚なく経口摂取を強く希望したが,経過不明のため病態把握が不十分な状態と考えた。肺炎の可能性もあるため直接訓練は開始できないが,治療後には経口摂取できる可能性があると説明し,診断的治療のため一旦禁食とした。かかりつけ医には全身状態の治療を,訪問看護スタッフには栄養管理と呼吸リハを依頼した。
 10月中旬に肺炎が寛解し,11月再診時は簡易CRP値:0.3mg/dlであった。VEにてトロミ付き水分の誤嚥は認めるものの喀出力が改善していたことから,少量の直接訓練は開始可能と判断した。当院にて適切な食形態と摂取量を指導して摂取可となり,肺炎の再発なく経過中である。
【まとめ】
 重度誤嚥のため経口摂取困難な症例と思われたが,診断的治療として一旦禁食としたことが嚥下機能の正確な診断につながった。