一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題ポスター

全身管理・全身疾患

全身管理・全身疾患

2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-077] 誤嚥性肺炎発症メカニズムの解明;1
―歯周病原菌はPAFRを誘導し肺炎球菌の肺細胞への付着を促進する―

○早田 真由美1,2、田村 宗明2、植田 耕一郎1、今井 健一2 (1. 日本大学歯学部摂食機能療法学講座、2. 日本大学歯学部細菌学講座)

【目的】
 口腔細菌が誤嚥性肺炎の原因となるため,多職種連携による口腔ケアが行われている。特に高齢者や要介護者においては細菌を含んだ唾液や食物残渣を誤嚥する機会が多く,実際に喀痰などから歯周病原菌等が検出される。しかし,口腔細菌がどのように肺炎の発症に関与するのか,なぜ予防に口腔ケアが有効なのか,EBMを実践する上でも重要な点は未解明のままである。この点を明らかにするために,呼吸器において肺炎関連細菌のレセプターとして機能しているPlatelet-activating factor receptor (PAFR) に着目し実験を行った。
【方法】
 代表的な歯周病原菌P. gingivalis(P. g)の培養上清で肺上皮細胞を刺激した後,PAFR発現をPCR,WB等で解析すると共に肺炎球菌の付着実験を行った。
【結果と考察】
 P. gの培養上清量依存的に,RNAと蛋白レベルでPAFR発現が増加した。また,P. gは転写レベルでPAFR発現を誘導していた。さらに,P. g刺激により肺炎球菌の肺上皮細胞への付着が増加すること,その付着がPAFRの特異的阻害剤で抑制されることを見出した。
 P. gはPAFR発現を誘導,肺炎球菌の定着・感染を促進することで肺炎の発症に関与していることが示唆された。実際にPAFR KOマウスでは肺炎による死亡率が減少すること,肺炎患者ではPAFR発現が亢進していることが報告されている。我々は口腔細菌が呼吸器細胞から炎症性サイトカイン産生を誘導することも見出しており(課題講演),肺炎発症機序の一端を解明できたと考える。さらなる医療連携の拡大には,歯科領域から分子レベルでのエビデンス発信が不可欠と考え,現在動物実験も進めている。