一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

講演情報

課題口演

ライブ

歯科訪問診療

2020年11月7日(土) 09:20 〜 11:00 A会場

[課題1-5] 訪問歯科診療において義歯治療不可能となる予測因子の探索

○小出 勝義1、白野 美和1、高田 正典2、吉岡 裕雄1、赤泊 圭太1、田中 康貴1、後藤 由和1、川谷 久子1、圓山 優子1、黒川 裕臣2 (1. 日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科、2. 日本歯科大学在宅ケア新潟クリニック)

【目的】
 2019年9月の総務省統計局発表データによると、日本の65歳以上の人口は3588万人(前年3556万人)、総人口に占める割合は28.4%(前年28.1%)といずれも過去最高となった。3.5人に1人は高齢者である現在、訪問歯科診療の要請は増加傾向にある。日本歯科大学新潟病院では、これまで30年以上にわたり地域における要介護高齢者の訪問歯科診療に取り組んできたが、その中治療内容の大半を占めるのは義歯治療であった。訪問歯科診療の経験が浅い歯科医師にとって、義歯新製の可否を判断するのは難しい。そこで今回我々は、訪問歯科診療において義歯治療不可能となる予測因子を明らかにすることを目的として、当科に歯科診療の要請があった患者を対象にその実態を分析し、義歯新製の可否と、口腔内の状況などの関係から興味ある知見を得たので報告する。
【方法】
 2013年4月から2018年3月の5年間で、日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科に訪問歯科診療の要請があった初診患者を対象とした。診療録をもとに年齢、性別、訪問場所、要介護度、訪問歯科診療の申込者・紹介元医療機関、既往歴、主訴、義歯の使用状況、口腔内の状況等について調査を行った。義歯使用者に関して、義歯の新製が可能であった群、新製が困難で修理により対応した群、義歯使用が困難で使用中止した群 に分類し、ロジスティック回帰分析を用いて解析を行った。
【結果と考察】
 対象者の人数は969名で、男性356名(36.7%)、女性613名(63.3%)、初診時平均年齢は79.1±13.5歳であった。義歯については、義歯の使用状況を従属変数とし、座位保持の状況、含嗽の状況、現在歯数を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った結果、有意なモデルが得られた。このことより、義歯製作の治療計画立案の際には、座位保持の状況、含嗽の状況、現在歯数を考慮することが有効であると示唆された。高齢者の増加に伴い、訪問歯科診療の要請が増える中、患者背景、地域の医療機関や施設の状況を踏まえ、今後さらに当科の実績を生かした診断、治療、連携体制の構築を推し進めていく予定である。なお、本研究は日本歯科大学新潟生命歯学部倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号:ECNG-R-392)。(COI開示:なし)