一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

講演情報

課題口演

ライブ

口腔機能低下症

2020年11月7日(土) 11:10 〜 12:50 A会場

[課題2-5] 地域在住高齢者の口腔機能低下症の有病率および栄養関連指標の検討

○五十嵐 憲太郎1,2、小原 由紀2、釘宮 嘉浩2,3、星野 大地4、白部 麻樹2、本川 佳子2、枝広 あや子2、伊藤 誠康1、大渕 修一2、渡邊 裕2,5、平野 浩彦2、河相 安彦1 (1. 日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴学講座、2. 東京都健康長寿医療センター研究所、3. 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座、4. 昭和大学歯学部 スペシャルニーズ口腔医学講座 地域連携歯科学部門、5. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】
口腔機能低下症は,複数の口腔機能が低下した状態であり,その診断のため包括的に口腔機能の評価が行われている。これまで口腔機能低下症に関連する報告は複数行われているが,多人数の地域在住高齢者を対象とした調査結果の報告はない。口腔機能低下症の有病率やその栄養状態が明らかとなれば,栄養管理も含めた包括的な口腔機能管理の有益な基礎情報となる。そこで本研究は異なる2地域での地域在住高齢者における口腔機能低下症の有病率を明らかにし,また口腔機能低下の有無での栄養関連指標との関連を検討することを目的とした。
【方法】
来場型健診を受診した東京都板橋区および群馬県草津町在住の65歳以上の高齢者1448名(男性586名,女性862名,平均年齢74.5±6.6歳)を対象とした。口腔機能低下症の診断項目として、Tongue Coating Index、口腔粘膜湿潤度、咬合力(デンタルプレスケール)、オーラルディアドコキネシス/ta/、舌圧、咀嚼機能(咀嚼能率スコア法)、嚥下機能(EAT-10)を評価した。栄養関連指標として、アルブミン、BMI、SMI、食欲(SNAQ)、食品摂取の多様性(DVS)を評価した。統計解析は、口腔機能低下症の性別ごと有病率をカイ二乗検定で、口腔機能低下症の有無による栄養状態の差をMann-WhitneyのU検定で検討した。(有意水準5%)。
【結果と考察】
口腔機能低下症の有病率は全体で589名(40.7%)であり、性差は認めなかった(p=0.117)。男女とも年齢階級が高くなるに従って有病率は上昇していた。口腔機能低下症の有無により栄養関連指標に男女とも有意差(p<0.05)を認めた項目は、アルブミン、SMI、SNAQ、DVSであった。以上の結果から、地域によらず加齢に伴い口腔機能低下症の有病者は増加する傾向が示唆された。また、口腔機能が低下している者はアルブミンのみならず食欲や食品摂取状況も低下していたことから、複数の栄養指標を用いて多面的にアセスメントし、対応していく必要性が示唆された。 
(本発表は東京都健康長寿医療センター研究所が実施する板橋お達者健診(代表者:大渕修一)および草津町健診(代表者:新開省二、北村昭彦)のデータを用いた)
(COI開示:なし、東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会承認:2018-迅15,16)