一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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口腔機能

[O一般-018] トレーニング器具を用いた高齢者の口唇閉鎖訓練における効果的な訓練時間および頻度

○沖 剛至1、太田 緑1、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座)

【目的】

高齢者の訓練では身体的および時間的な制約を考慮すべきである。負担軽減に配慮した訓練を実施するために、本研究では高齢者の口唇閉鎖訓練における時間および頻度が口唇閉鎖力に及ぼす影響を検証した。

【方法】

訓練時間の検討で、被験者は65歳以上の女性8名(平均年齢75±4歳)とした。トレーニング器具(りっぷるとれーなー,松風)を用いた50秒(A)と3分(B)の口唇閉鎖訓練を4週間ずつ実施し、訓練間は4週間休止した。訓練Aでは器具を1方向から、訓練Bでは3方向から牽引した。口唇閉鎖力の測定には口唇閉鎖力測定装置を用い、訓練開始時(0週)、2週後、および4週後に測定した。0週、2週および4週の口唇閉鎖力を、訓練毎にFriedman検定後Steel-Dwass法を用いて解析した(α=0.05)。

訓練頻度の検討で、被験者は65歳以上の女性40名(平均年齢75±6歳)とした。被験者を頻度別に10名ずつ4群に割り付け、訓練Bを4週間実施した。各群の頻度は毎日、隔日、週1日、および訓練なしとした。口唇閉鎖力の測定方法および統計解析は訓練時間の検討と同様にした。

【結果と考察】

訓練時間の検討で、訓練Aでは各測定時期で有意差がなかった。訓練Bでは0週(11.3±1.4N)と4週(13.4±1.4N)に有意差があった。

訓練頻度の検討で、毎日群では0週(9.8±3.7N)と2週(10.9±3.7N)、および0週と4週(11.8±3.5N)で有意差があった。隔日群では0週(14.0±4.1N)と4週(15.8±3.7N)で有意差があった。週1日群では0週(14.0±3.1N)と2週(15.2±3.4N)、および0週と4週(15.2±3.2N)で有意差があった。訓練なし群では各測定時期で有意差がなかった。

訓練時間の検討で、訓練Bは訓練Aより訓練時間が長いことに加え、3方向からの牽引によって口輪筋全体が刺激されて口唇閉鎖力が向上したと考えられる。

訓練頻度の検討で、口唇閉鎖力は毎日、隔日、週1日の頻度でそれぞれ向上した。より少ない頻度での効果は、患者の健康状態やモチベーション、施設のリハビリテーション状況、または介助者の時間的制約といった高齢者を取り巻く環境に合わせた頻度の選択肢を広げ、高齢者の訓練計画の立案に寄与すると考えられる。

(COI開示:なし)
(東京歯科大学 倫理審査委員会承認番号 725)