一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

講演情報

一般演題(口演・誌上開催)

PDFポスター

その他

[O一般-051] 義歯安定剤,保湿剤の口腔機能時を想定した維持力の経時的変化

○池村 直也1、佐藤 裕二1、北川 昇1、武田 佳奈1、山根 邦仁1 (1. 昭和大学歯科病院高齢者歯科学講座)

【目的】
 高齢患者には,口腔乾燥症により義歯の維持が困難になる場合が多い。義歯安定剤を使用する患者も多いが,清掃性の悪さ,口腔乾燥による維持力不足が懸念される。そこで,清掃性も良く,保湿性のある口腔乾燥症用義歯安定剤,口腔保湿剤の使用が推奨されることがある。先行研究では,口腔内を模型上で再現し,口腔乾燥症用義歯安定剤,口腔保湿剤を使用することで,短期的には義歯安定剤より高い維持力を発揮できる可能性が示唆された。しかし,義歯の維持力の経時的変化について,義歯安定剤,口腔乾燥症義歯安定剤,口腔保湿剤を比較検討した報告は認められていない。そこで口腔内の安静時,機能時を模型上で再現し,維持力の経時的変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
シリコーン製の無歯顎堤模型から,咬合床様のレジン製の実験床を製作し,口蓋中央部に牽引用リングを付与した。被験試料として,義歯安定剤(クリームタイプ),口腔乾燥症用義歯安定剤(ジェルタイプ),口腔保湿剤,義歯用保湿剤の4種類を用いた。実験床に被験試料を塗布し,模型に圧接して25 Nの荷重を加え,水中に浸漬した。その後取り出し,push pull gage を用いて咬合平面と垂直方向に毎秒1 Nの速度で牽引し,維持力を測定した。実験条件は安静時と,咬合圧を想定して荷重を繰り返し加えた機能時の維持力の経時的変化の2条件で行なった。
【結果と考察】
安静時では,クリームタイプの維持力は,浸漬前は最も低い値を示したが,60分後以降は最も高くなった。ジェルタイプは,浸漬前は最も高い値を示したが,90分後以降は低下した。口腔保湿剤は,浸漬前は高い値を示したが,30分後には急激に低下し,90分後には最も低い値を示した。義歯用口腔保湿剤は,浸漬前から低い値を示し,時間の経過とともに低下した。機能時では,すべての試料で30分後の値が,安静時の90分後の維持力に相当したが,維持力の経時的変化は,同傾向を示した。機能時の経時的変化は,荷重を繰り返し多く加えることで,被験試料が水分を含む時間が早まり,維持力の変化も早くなった。以上の結果より,60分以上の飲食時間を想定するとクリームタイプが優れているが,一般的な飲食時間では,なじみも良く,清掃性も高い,保湿性のあるジェルタイプの有用性が示唆された。