一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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口腔乾燥症 共同シンポジウム

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口腔乾燥症新分類案

座長:岩渕 博史(神奈川歯科大学大学院歯学研究科顎顔面病態診断治療学講座顎顔面外科学分野)

[SY4-1] 口腔乾燥症をどう考えるべきか 新分類案の概念―口腔乾燥症の疫学・診断・管理・為害作用の観点から―

○岩渕 博史1 (1. 神奈川歯科大学大学院歯学研究科顎顔面病態診断治療学講座顎顔面外科学分野)

【略歴】
1992年3月:
東京歯科大学卒業
1992年5月:
慶應義塾大学医学部研修医(歯科口腔外科)
1998年7月:
慶應義塾大学医学部助手(歯科口腔外科学)
2001年5月:
国立栃木病院歯科・歯科口腔外科・小児歯科 歯科医長
2009年4月:
慶應義塾大学医学部講師(非常勤)
2013年11月:
神奈川歯科大学顎顔面外科学講座 診療科講師
2015年4月1日:
神奈川歯科大学大学院歯学研究科顎顔面外科学講座 准教授
2017年4月1日:
神奈川歯科大学大学院歯学研究科 顎顔面病態診断治療学講座 顎顔面外科学分野 准教授(現在に至る)

日本歯科医学会連合 臨床研究支援委員会 委員長
日本歯科医師会医薬品委員会委員
日本歯科医師会保険適用検討委員会委員
神奈川県歯科医師会 がん診療医科歯科連携委員会委員

口腔乾燥症とは、自覚的・他覚的な口(口腔)の乾燥症状であると理解され、類似した言葉にドライマウス(Dry mouth)や口渇がある。口腔乾燥症の頻度には様々な報告がある。報告者により頻度が異なる原因は口腔乾燥症の定義やそれに基づく診断方法が異なるためである。欧米では口腔乾燥症と唾液分泌減少症を明確に分け議論が行われているが、本邦では曖昧にされていることが多い。口腔乾燥症を疾病と捉えた場合に、口腔乾燥感と唾液分泌減少のどちらに主眼を置き口腔乾燥症を考えるかが重要である。唾液には周知のごとく、様々な働きがあり、生体の恒常性維持に大きな役割を果たしている。そのため、唾液の量的および質的変化が口腔内に生じた場合が口腔乾燥症への介入時期と考えている。しかし、唾液の質的・量的変化を正確に捉えることは容易ではない。様々な方法で唾液量や粘膜水分量の測定が行なわれているが何れの検査においても利点と欠点があり、何れの検査を行なうべきか迷うことがある。その際、期待する唾液の働きを考えると必要な検査方法が分かってくる。患者の状態により粘膜の荒れ(疼痛や味覚障害)、口腔乾燥感、口腔衛生管理(主に口腔粘膜への付着物)など何れの口腔乾燥状態に主眼を置かれているかを考え検査を進める必要がある。分泌唾液が問題となるのであれば安静時や刺激時の唾液分泌量を測定する必要があるが、口腔衛生管理に主眼が置かれるADL低下患者であれば、唾液分泌量よりも粘膜水分量が問題となることも多い。治療も何を改善したいかにより、ゴールが異なることからその方法も異なる。治療目標により、唾液分泌量を増やす必要があるのか、口腔粘膜の保湿や加湿を行えればいいのか、患者の訴えは何かにより治療法や対処法を選択する。口腔乾燥症の治療を考える上でもうひとつ問題となるのが、口腔乾燥感を訴えるが他覚的に異常がない患者や自覚症状の訴えはないが、唾液分泌量が減少している患者である。前者の原因は様々議論されているが結論は出ていない。しかしながら、口腔乾燥感を訴え、医療機関に助けを求めて来院する患者に治療を施すのがわれわれの使命であり、対応は必要である。また、唾液の働きを考えると自覚症状の有無に関係なく唾液分泌量がある一定量よりも減少しているのであれば、治療介入する必要があると考えている。今回4学会で検討した口腔乾燥症の新分類案はこれらの問題を解決すべく工夫されている。