一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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超高齢者に安全な歯科医療を提供するために

座長:片倉 朗(東京歯科大学口腔病態外科学講座)

[SY8-1] 「高齢者の歯科診療に望まれていること」

○寺嶋 毅1 (1. 東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科)

【略歴】
1988年:
慶應義塾大学医学部卒業
1988年:
慶應義塾大学医学部内科学教室 研修医
1990年:
社会保険埼玉中央病院 内科 医員
1992年:
慶應義塾大学医学部内科学教室呼吸循環研究室 専修医
1995年:
カナダBritish Columbia大学医学部胸部研究室 留学
1997年:
東京歯科大学市川総合病院内科学講座 助手
1999年:
東京歯科大学市川総合病院内科学講座 講師
2008年:
東京歯科大学市川総合病院内科学講座 准教授
2012年:
東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科 准教授 部長
2014年:
東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科 教授 内科部長兼任

歯科と医科の連携において、よくあるケースは、高齢者、基礎疾患をもつ患者の診療についての医科への対診である。認知症、多くの薬を服用されている患者、心疾患、呼吸器疾患を有する場合に、安心、安全に治療や処置ができるための情報共有である。

健康な時と同様に自分の力で活動、生活ができるまでを健康寿命という。平均寿命と健康寿命との差、日常生活に制限のある期間が、男性では9年、女性では12年である。その間、何かしらの助けが必要になる。全身のいろいろな部分の機能が低下してきた時期に歯科医療が貢献できることは少なくない。慢性心不全、慢性腎不全、慢性呼吸不全などの、臓器機能障害のある患者では入院などを繰り返し死に至る。認知症の患者も発症後、徐々に日常生活に支障をきたし、介護が必要な期間も短くはない。この自立が難しくなり、医療のサポートや介護が必要になった時期に、生き生きとできるためには、患者さんが大切にしているもの、家族、今まで生きてきた軌跡、思い出、人生の最後の時期にしたいこと、それらをrespect(尊重)することが大切である。

高齢者の健康づくりで大切な点は①適度に体を動かし休養をとること、②自分で咀嚼し、おいしく食べること、③老いを受け入れうまく適応すること、社会に参加すること、④体力や身体機能に合わせて行動することである。これらは、咀嚼・嚥下や発声といった口の健康と密接に関連している。

口腔をみる、から人をみる、ことが求められている。口腔内の症状にも全身状態を考慮して、検査、治療する必要性があること、全身状態を改善させるために、口腔内のケアが重要である。高齢者の生活の場、身体活動がどれだけ可能であるのかを考慮して治療にあたる。すなわち、生活をみる、ことが求められている。口腔内所見が内科疾患発見のきっかけになることもある。口腔内から視野を大きく広げ、全身、生活をみる、という医療の基本の一部分を担う大事な役割を果たすことになる。

高齢者の歯科医療が安心、安全に行えるように、高齢者がより豊かな時を過ごせるように、取り組んで頂きたいことが伝われば幸いである。



COI開示:なし



老年歯科医学会:非会員