一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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認定医審査ポスター

2021年6月11日(金) 14:30 〜 16:30 認定医Line2 (Zoom)

[認定P-15] 神経変性疾患の病態にあわせてモバイル型軟口蓋挙上装置を作製した症例

○河合 陽介1、寺中 智1 (1. 足利赤十字病院リハビリテーション科)

【目的】神経変性疾患の多くは、口腔機能や摂食嚥下機能に障害を認める。前頭側頭葉変性症もその一つであり、前頭・側頭葉に限局した進行性の変性を呈し、初老期に好発する神経難病である。病態は様々だが、本症例では構音障害、嚥下障害を中心とした病態であり、病状の進行に合わせてモバイル型軟口蓋挙上装置(以下モバイルPLP)の製作が必要であったので、その一例を報告する。
【症例の概要と処置】72歳、女性。C型肝炎 脂質異常症 糖尿病の既往あり。「うまく話せない」を主訴に2020年4月当院神経内科受診。9月病状進行に伴い当科受診。現病歴は、2019年12月より呂律が緩慢になった。2020年3月、飲み込みにくさ、会話時の息苦しさを自覚。9月、神経内科にて前頭側頭葉変性症の初期と診断。当科初診時、発話明瞭度が3/5で開鼻声あり、挺舌は口唇まで、舌萎縮は認めなかった。また、軟口蓋挙上不全と呼気鼻漏出を認めた。9月に嚥下造影検査(VF)実施し、軟口蓋挙上不良、舌挙上不良を認め、軟口蓋挙上装置(PLP)作製開始した。患者は構音障害の改善を重視しており、発話用にPLPを作製した。10月PLP装着。開鼻声は改善したが、使用経過をみて、挙上子を調整した。しかし、唾液の嚥下困難感があり、12月モバイルPLPへ修理し、嚥下内視鏡(VE)を実施。液体嚥下時の鼻咽腔への逆流は改善。2021年1月病状の進行に伴い、構音障害が悪化し、嚥下障害が出現。ST、患者と相談し、嚥下用PLPに切り替え、口蓋の形態を修正して、調整継続中。なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】PLP製作当初は、舌の可動域も広く、装着により開鼻声の改善がみられ、会話用として使用していた。しかし、経過に伴い舌の可動域が狭まり、嚥下障害の悪化を認めたため、嚥下用に口蓋の形態修正を行い、モバイルPLPへ修正を行った。モバイルPLPは従来型より装着感が良く、口蓋の形態を修正することで、PAPの機能も有することが可能である。そのため、神経変性疾患のように病態が進行していく疾患では、今回の症例のように変化していく病態に合わせて調整がしやすく、有用な装具であると考えられる。また、適切な調整をするためには病態の把握が必須であり、主治医と綿密な情報共有を行い、多職種で評価を行い連携していく必要があると考えた。