一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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認定医審査ポスター

2021年6月11日(金) 14:30 〜 16:30 認定医Line3 (Zoom)

[認定P-24] 喉頭全摘術が適応であった誤嚥性肺炎を繰り返すパーキンソン病患者の一例

○川勝 美里1、戸原 玄2 (1. 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野、2. 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【諸言】

パーキンソン病は嚥下障害を生じる代表的な疾患である。今回パーキンソン病による嚥下障害のため一時的に経口摂取困難となったが、喉頭全摘術後に再び経口摂取可能となった症例を経験したので報告する。

【症例】

症例は67歳男性、パーキンソン病のため在宅療養していた。「食形態をあげたい」との主訴があり、当科より訪問診療を開始した。ペースト食を3食経口摂取だったが、以前から誤嚥性肺炎による入退院を繰り返していた。初診時、歩行:介助下で可、意思疎通:可、発語:短い発声のみ可、BMI:23、残存歯数:17本、臼歯部咬合支持域:なし、同居家族:妻、服用薬剤:イーシー・ドパール配合錠®️、ドプスO D錠®️、メトリジンD錠®️など。嚥下内視鏡検査の結果、食物の梨状窩への残留及び食道入口部開大不全も認められたため、経口摂取を続けながら開口訓練及びバルーン訓練を行う方針とした。

なお、本報告の発表について患者代諾者から文書による同意を得ている。

【経過】

バルーン訓練開始前に誤嚥性肺炎により再度入院し(初診日+2か月)、当科の訪問診療は一時中断し、入院先医師の判断で胃瘻造設となった(+5か月)。胃瘻造設後は経口摂取の機会が減少し、嚥下機能はさらに低下した。訪問診療再開後、間接訓練を開始したが再度誤嚥性肺炎により入院(+1年8か月)した。患者家族より経口摂取の希望が強く誤嚥防止術を検討していると連絡があったことから、当科にて手術の種類や術後に予測される利点、欠点などを説明し、最終的に喉頭全摘術を受けることになった。術後、咽喉頭の形態変化に合わせた経口摂取方法や食形態を指導し、経口摂取量が増加した。現在は胃瘻を併用し在宅療養を継続している。

【考察】

誤嚥防止術の一つである喉頭全摘術の目的は、誤嚥の完全防止及び嚥下機能の改善である。本症例では胃瘻造設後も誤嚥性肺炎を繰り返したため、誤嚥防止術を推奨した。その効果により誤嚥がなくなり、肺炎などの呼吸器合併症を予防できた。喉頭全摘術では術後に声を出せなくなるというデメリットがあるが、本症例では声を失うことに対する懸念も少なかったため、その点では術後の影響は少なかったと考えられる。よって誤嚥のリスクはなくなり主訴であった食形態の向上も可能となっただけでなく、患者及び家族のQOL向上にも寄与することができたと考えられる。


(COI開示:なし)