The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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連携医療・地域医療

[P一般-044] 地域歯科医師会と歯学部附属病院間で実施した摂食嚥下障害に対するオンライン診療の試み

○出浦 惠子1、原 豪志2、並木 千鶴3、玉井 斗萌3、戸原 玄3、小宮山 和正1 (1. 埼玉県歯科医師会、2. 神奈川歯科大学附属病院 全身管理医歯学 摂食嚥下外来、3. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】地域、特に居宅や高齢者施設訪問歯科診療における摂食嚥下障害への対応の必要性は高まるばかりであるが、対応できる医療資源は偏在し、また摂食嚥下障害への対応は専門性が高く地域包括ケアシステムの中だけでは完結しにくい。そこで、地域歯科医師会に所属する一般臨床歯科医師(以下、地域歯科医師)と歯学部附属病院に所属する摂食嚥下を専門とする歯科医師(以下、摂食嚥下専門医)がオンライン診療により連携し、摂食嚥下障害患者に対応する試みを行なったので報告する。
【方法】地域歯科医師が訪問診療中の特別養護老人ホーム入所者および居宅療養中の患者1名に対して、東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野の歯科医師とD to P with Dの形態でオンライン診療を行った。まず、施設入所者のうち嚥下に問題があると思われる12名に対して予めKTバランスチャートを作成しておき、看護師、介護職、管理栄養士と共に、東京医科歯科大学から派遣された歯科医師と地域歯科医師でミールラウンドを実施した。さらに問題のある3名に対しては嚥下内視鏡検査を行い、それらを大学で待機していた摂食嚥下専門医にオンラインで配信し、摂食嚥下障害への対応の助言等を受けた。さらに地域歯科医師が訪問する居宅の患者についても同様にオンライン診療を実施した。診察結果、助言内容等は医師、リハビリ職にも画像を用いて情報提供した。
【結果と考察】今回の取り組みにより、地域の歯科医療職及び多職種は摂食嚥下障害患者が有する問題点を共有し的確な指導を受けることができた。維持期の摂食嚥下障害においては身体や口腔機能の問題だけではなく、患者の置かれた環境因子が予後に大きく関与する。例えば適切な形態の食事を、実際の住環境の中で適切な姿勢をとって提供可能かなど、外来では状況把握困難なこともオンライン診療では把握しやすく、個々の患者の環境に合った指導を受けることができた。また、今回の取り組みは、新型コロナウイルス感染症蔓延の状況下にあっても感染予防を行いつつ、地域歯科医師会がオンライン診療を実施可能なシステム構築の一助になったと考えられた。今後も摂食嚥下障害の専門家との適切効果的な連携を深めることで、地域医療の水準向上に努めたい。
(COI 開示なし)