一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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一般部門

[P一般-017] 歯学部4年生の生や死に対する意識調査~講義後の変化について

○遠藤 眞美1、野本 たかと1 (1. 日本大学松戸歯学部 障害者歯科学講座)

【目的】
 口腔ケアや歯科的介入がQOL(Quality of Life)やQOD(Quality of Death)に重要であると理解され,歯科医療職が終末期患者に関わるようになってきた。現在の歯学教育では,死生学や死生観を促す系統的な教育の機会は少なく,終末期医療に対する意識や患者に関する知識などは各人の興味や経験に委ねられている。我々は,終末期患者および家族に適切に関われる歯科医療職の育成に向けた効果的な教育内容を検討するのために学生の死生観などを継続的に調査してきた。今回は,口腔機能を中心にライフコースを学ぶ障害者歯科学,高齢者歯科学,小児歯科学,摂食嚥下リハビリテーション学といった講義を受講する4年生に対して,それらの講義前と終了時の学生の生や死に関する知識や意識について調査したので報告する。
【方法】
 対象は,日本大学松戸歯学部4年生とした。方法は,独自で作成した無記名自記式の質問票調査を4月の障害者歯科学の講義前(以下,講義前)129人と,翌年1月の摂食嚥下リハビリテーション学の講義後(以下,講義後)104人に実施した。項目は,身近な人との死別経験の有無,生や死に対する意識や知識に関する項目とした。
【結果と考察】
 「将来の仕事は死に関わる」が講義前104人(80%),講義後97人(91%)と有意に増加を認めた(p<0.05)。終末期医療を行いたい希望は講義前71人(55%),講義後64人(60%)とやや増加していた。また,胃瘻造設の選択を相談された場合,「関わりたくない」は講義前22人(9%)が講義後2人(2%)と減少を認めた。講義後,学生は歯科医療者が終末期患者や家族と関わる必要性を感じていると推察された。しかし,死生観についてはあまり大きな変化はなかった。学生の死生観は身近な人との死別経験によって異なっていることを報告しており,実際に終末期患者と関わることのできる歯科医療職としてのプロフェッショナルリズムを理解する機会として生や死を意識できる臨床実習への内容の導入をはかり,学生が経験することが重要であると示唆された。
(COI開示:なし)
(日本大学松戸歯学部 倫理審査委員会 EC16-008)