一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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症例・施設

[P一般-076] 口腔底がん術後後遺症による摂食嚥下障害患者に対して術後経口摂取指導した症例

○上田 智也1、岡澤 仁志1、草野 緑1、進藤 彩花1、大岡 貴史1 (1. 明海大学歯学部 機能保存回復学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】

口腔底がん術後の摂食嚥下障害に対して,術後1週間からの経口摂取指導と外来フォローまで摂食嚥下リハビリテーションを行った.

【症例概要】

79歳男性.X年5月7日に口腔底部の腫瘤の精査のため当院口腔外科受診.精査の結果右側口腔底がんと診断されX年6月10日に右側口腔底がん摘出術,気管切開術,右側頸部郭清術,下腹部からの植皮による口腔粘膜再建術を行った.術後の経口摂取指導が必要とされたため摂食嚥下指導を依頼され当科受診となった.X年6月22日より経口摂取指導を開始した.同日はMWST4,舌挙上可能,連続喉頭挙上不可であったため看護師見守り下での吸い飲みを使用した少量ずつの飲水を開始した.X年6月23日,水分嚥下時のムセを確認したため嚥下内視鏡検査にて水分量,増粘剤の有無を評価した.水分,薄いとろみ,濃いとろみをそれぞれ3ml,5mlずつ,90度座位にて検査した.増粘剤なしの水分では咽頭残留なく,一口量の過多によりムセが発生していたと判明したため一口量の再指導を行った.また、同日から術後低下していた舌圧の向上のため舌抵抗訓練を開始した.ペコぱんだの使用を勧めたが金銭的な理由から断られたため舌圧プローブを改造した訓練器具を作成し訓練を指導した.X年6月25日,先行期の舌運動の改善がみられたためX年6月26日より流動食を開始した.口腔底に食渣残留があったが交互嚥下にてクリアを確認した.X年6月29日,3分刻みをFTしたが残留が交互嚥下にて除去できなかったため5分ミキサーを試みたところ口腔残渣量減少,これ以降もFTを行った結果極刻みに濃いとろみを加えたものが最も残留が少なかったため最適な食形態とし,X年7月9日退院,外来フォローとなる.



【結果と考察】

本症例では口腔底がん術後の後遺症として摂食嚥下障害を持つ患者に対して,舌抵抗訓練,経口摂取指導などのアプローチを行った.舌の精緻性の低下による口腔底の食渣残留が問題となったが,訓練と食形態の指導によって残渣の減少がみられた.よりよい食形態を選択できるよう栄養士との話し合いが必要であると考えらえた.今後は訓練と指導を継続し,残渣のさらなる減少と食上げを行うことが必要であると考えられた.