一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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実態調査

[P一般-047] 認知機能の低下を認める自立高齢者の口腔関連QOLについて

○豊下 祥史1、佐々木 みづほ1、菅 悠希1、川西 克弥1、原 修一2、三浦 宏子3、越野 寿1 (1. 北海道医療大学歯学部咬合再建補綴学分野、2. 九州保健福祉大学保健科学部言語聴覚療法学科、3. 北海道医療大学歯学部保健衛生学分野)

【目的】

 認知症患者数は増加しておりその対策が急務となっているが、現在のところ根本的な治療はなく、認知機能を維持し、認知症を予防することが重要視されている。口腔機能は認知機能と関連する重要な因子の一つであり、認知機能が低下した自立高齢者の咀嚼機能は低下していることが報告されている。一方、認知機能が低下している高齢者の口腔関連QOLについては報告が少ない。そこで、本研究では認知機能が維持されている高齢者と低下を認める高齢者の口腔関連QOLを調査したので報告する。

【方法】

 自立高齢者1,550名に調査を依頼し、協力を得られた188名を対象に調査を行った。初めにMini-Mental State Examination により認知機能を調査した。30満点中、27~30点を認知機能正常(Normal群)、24~26点を認知機能低下(Impaired群)とし、23点以下は調査内容を正確に理解できていない可能性があるため、分析から除外した。次に問診および口腔内の診察を行った後、規格化されたグミゼリーを試験食品とした咀嚼能力検査を行った。最後に口腔関連QOLをGOHAIを用いて測定した。統計分析は、Student’s t-test、Mann–Whitney U testおよびChi-squared test(いずれも危険率5%未満)を用いた。

【結果と考察】

 Normal群(n=92)とImpaired群(n=71)の現在歯数と咀嚼能力検査に有意な差を認めた。GOHAIの結果は、Normal群の合計点が53.9±6.0、Impaired群のそれが52.8±7.1であり、合計点、下位尺度の合計点のいずれも有意な差を認めなかった。回答内容については、質問項目の2,7,9,10,11に有意な回答内容の差異が認められた。本研究の結果から、認知機能が低下している自立高齢者は咀嚼機能が低下しており、口腔に起因する摂食の問題や心理的障害、不快感を抱えていることが明らかとなった。歯科治療や口腔ケアによって問題を解決し、栄養摂取の改善に加え、活発な社会参加を促すことが認知機能の維持に有効であると考えられる。

(COI開示:なし)

(北海道医療大学歯学部・大学院歯学部歯学研究科倫理審査委員会第123号)