一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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実態調査

[P一般-048] 介護老人保健施設入所者の食事形態低下に関する要因の検討

○鈴木 史彦1、北條 健太郎1、渡邉 聡1、渡部 議之1、鈴木 海路1 (1. 奥羽大学歯学部附属病院地域医療支援歯科)

【目的】
要介護高齢者の摂食嚥下機能低下においては,代償的アプローチとして食事形態が変更されることがある。本研究は介護老人保健施設入所者の食事形態低下に関する要因について調査したものである。
【方法】
対象は介護老人保健施設に入所しており,ミールラウンドを継続的に実施した109名(男性30名,女性79名,平均年齢87.2±5.8歳,平均要介護度3.4±1.2,平均ミールラウンド期間8.0±8.1か月)とした。調査項目は年齢,性別,要介護度,脳血管疾患,認知症,口腔内(自歯・義歯・粘膜咀嚼),初回と最終回の食事形態,および最終回のミールラウンド調査項目として食事姿勢,傾眠,食事動作(止まる),詰め込み食べ,食べこぼし,口唇閉鎖,咀嚼回数(少ない),努力嚥下,湿性嗄声,むせ,および食事摂取量(低下)とした。調査期間中の食事形態の変化から維持群と低下群に分類して単変量解析を実施した。さらに,認知症の有無でも分類して二元配置共分散分析(ANCOVA)と多重ロジスティック回帰分析を実施した。
【結果と考察】
単変量解析において食事形態低下と関連があった項目は初回の食事形態(p = 0.001),認知症(p = 0.034),食事動作(止まる) (p = 0.016),口唇閉鎖(p = 0.021),咀嚼回数(少ない)(p = 0.004),食事摂取量(低下)であった。ANCOVAで共変量を年齢と性別で調整した場合,交互作用を認めたのは食事姿勢(p = 0.023)と努力嚥下(p = 0.032)であった。さらに従属変数を食事形態低下として,認知症の有無で層別化して実施した多重ロジスティック回帰分析の結果では,努力嚥下は認知症群においてのみ有意な独立変数であった(オッズ比65.997(1.285 – 3389.383), p = 0.037)。すなわち,要介護高齢者において努力嚥下をしている認知症群は,非認知症群のそれよりも食事形態が低下しやすい可能性が示された。
(COI開示:なし)
(奥羽大学倫理審査委員会承認番号第197号)