The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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実態調査

[P一般-053] 高齢者における唾液検査装置に関する調査―口腔内の検査項目と多項目唾液検査結果の比較―

○松原 ちあき1、白部 麻樹1,2、古屋 純一3、渡邊 裕2,4、本川 佳子2、枝広 あや子2、小原 由紀2、岩崎 正則2、大渕 修一2、平野 浩彦2、水口 俊介1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学専攻 高齢者歯科学分野、2. 東京都健康長寿医療センター、3. 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座、4. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【目的】高齢者の残存歯増加により歯周疾患をはじめとする口腔管理ニーズは増加している。近年、早期発見・治療だけでなくメインテナンスや歯科保健指導による積極的な予防が進められている。簡便で非侵襲的に採取可能な唾液による検査は患者の口腔内の情報把握に有用だと報告されているが、多くは壮年・中年期成人が対象であり、高齢者での報告は散見される程度である。本研究では既存の唾液検査を使用し、口腔内の臨床評価との関連を分析し、高齢者の唾液検査の活用の在り方を検討した。
【方法】地域在住高齢者で同意を得た50名のうち、無歯顎者、抗菌薬使用、口腔粘膜疾患を有する者を除く38名を分析対象とした。唾液検査は多項目唾液検査装置(アークレイ社)を用い、唾液中のう蝕原性菌、酸性度、酸緩衝能、潜血、白血球、タンパク質、アンモニアを測定した(0-100のスコア法で点数が高値ほど不良、酸緩衝能のみ低値ほど不良)。口腔内診査で、残存歯数、う蝕の有無、歯周ポケットの深さ(PPD)(6点法)等を評価した。唾液検査と口腔内診査の結果を、残存歯数を調整変数として偏相関分析を実施し、検査項目を比較した。
【結果と考察】平均年齢74.9歳で、女性78.9%であった。唾液検査の結果、う蝕原性菌50.8、酸性度75.8、酸緩衝能47.1、潜血39.6、白血球60.9、タンパク質74.0、アンモニア69.0であり、検査装置添付の中年期までの成人対象の基準値よりもすべての項目で高値を示した。偏相関分析の結果、残根を含むう蝕歯数とアンモニア(r=0.45)、PPDと潜血(r=0.44)、白血球(r=0.34)に有意な正の相関を認めた。先行研究で残根の存在がアンモニアと関連する口臭の原因になることや歯周組織の破壊と歯肉の出血反応や免疫応答による白血球の増加を認めることが示され、本研究でも同様の傾向を示した。検査値が成人対象の評価基準より高値を示したことは、高齢者の歯周疾患罹患率が高いことや残根数が多いことなど加齢による口腔内の変化が影響したと考えられた。唾液検査を歯科保健指導等に用いる際には、変化を示す等により患者の行動変容につながる可能性があるが、その活用については加齢変化を考慮し口腔内の状態と合わせて患者の理解が得られるように説明する必要がある。(COI開示:なし)(東京都健康長寿医療センター倫理審査委員会平成29年度33号)