The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演)

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一般口演4
症例・施設2

Sun. Jun 13, 2021 9:50 AM - 10:30 AM Line C (ライブ配信)

座長:會田 英紀(北海道医療大学歯学部高齢者・有病者歯科学)、山崎 裕(北海道大学大学院歯学研究院 高齢者歯科学教室)

[O4-2] 誤嚥性肺炎を繰り返す患者に対し、多職種連携にて介入し嚥下機能が改善した症例

○森田 達1、中澤 悠里1、大塚 あつ子1、近石 壮登1、谷口 裕重2 (1. 医療法人社団登豊会 近石病院 歯科・口腔外科、2. 朝日大学 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】

 回復期リハビリテーションにおいて栄養管理は機能回復の予後に影響を与えるため重要である。今回われわれは,肺がん発症後より誤嚥性肺炎を繰り返す患者に対し,栄養管理を含めた摂食嚥下リハビリテーション(以下,嚥下リハ)を多職種にて連携し実施することで嚥下機能の改善に至った一例を報告する。

【症例の概要と処置】

 77歳,男性。誤嚥性肺炎,肺癌(右上葉肺切除ならびに抗がん剤治療実施,追加治療の予定なし),COPDの既往あり。誤嚥性肺炎にて急性期病院に入院し,9病日に経口摂取再開となったが,再発のリスクが高く,嚥下リハ目的にて当院へ入院した。初期評価にて,義歯不適合を認め,口腔機能低下症は舌圧,ODK,残存歯数,咀嚼機能,嚥下機能の5項目が該当した。嚥下機能評価ではMPT2秒,RSST3回,MWST(中間とろみ)評点3bであった。GLIM診断にて,BMI低値(15.6kg/m2),筋肉量減少(CC22.5cm)に加えCOPDがあり低栄養と診断した。4病日に実施したVEでは声帯麻痺なし,声帯下に痰の貯留あり咳嗽力の低下が考えられた。VFでは食塊形成不良,中間とろみ水の咽頭残留および嚥下中の喉頭侵入を認めた。廃用および低栄養に起因する嚥下障害が疑われた。食形態は主食:粥ゼリー,副食:ソフト食(コード1j),水分:お茶ゼリーとした。管理栄養士が活動量を考慮した必要エネルギー量を設定し,栄養補助食品を付与した。当科とSTにて,咳嗽力低下に対しシルベスター法および咳嗽訓練,咽頭収縮力低下による咽頭残留に対しシャキア訓練,喉頭閉鎖不良による喉頭侵入に対し息こらえ嚥下を実施した。義歯不適合による準備期障害は上下義歯新製にて対応した。

【結果と考察】

 入院18病日のVE・VFでは,薄とろみ水において喉頭侵入,誤嚥はなく咽頭機能の改善を認めた。固形物では,一口大(コード4)まで食塊形成が可能であった。退院後18日の当科受診時には,BMI(16.4kg/m2),CC(24.0cm)と改善を認めた。口腔機能低下症は舌圧,咀嚼機能の2項目が改善した。本症例では廃用や低栄養に起因した嚥下障害の疑いがある患者に対して多職種連携にて介入し,嚥下機能の改善が可能であった。リハビリのみではなく,栄養状態を含めた多職種連携による介入が重要であることが示唆された。(COI開示:なし)