一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

講演情報

歯科衛生士シンポジウム

Live配信抄録 » 歯科衛生士関連委員会シンポジウム

歯科衛生士シンポジウム
認知症の人への歯科衛生士の関わり〜口腔健康管理を通して〜〈DH〉

2021年6月13日(日) 11:10 〜 13:10 Line B (ライブ配信)

座長:藤原 ゆみ((一社)岡山県歯科衛生士会)、阪口 英夫(医療法人永寿会 陵北病院)

[DHSY-4] 管理栄養士による在宅の食支援~認知症へのアプローチ~

○時岡 奈穂子1 (1. 特定非営利活動法人はみんぐ南河内 認定栄養ケア・ステーションからふる)

【略歴】
平成 5年 大谷女子短期大学家政学科卒業
平成11年 大手前栄養文化学院卒業
平成14年 社会福祉法人ふれあい共生会食事サービス科入職
平成21年 日本福祉大学福祉経営学部医療・福祉マネジメント学科卒業
平成26年 はみんぐ南河内 代表
平成28年 特定非営利活動法人はみんぐ南河内 副理事長
平成29年 大阪市立大学大学院生活科学研究科前期博士課程修了(生活科学修士)
平成31年 (特非)はみんぐ南河内認定栄養ケア・ステーション 代表(兼務)
令和 2年  同 栄養ケア・ステーションからふる(名称変更) 代表(兼務)
認定在宅栄養専門管理栄養士、南河内在宅医療懇話会委員、羽曳野市医療と介護連携会議委員、藤井寺市一体化地域ケア会議委員、富田林市ケア方針検討会委員
認知症患者の多くは高齢者であり、2020年では65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%(約602万人)、約6人に1人が認知症患者です。今後も認知症患者の占める割合は増加を示し、2040年の推計では人口の20%(約800万人)強、つまり65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症を発症するとされます。決してまれな疾患では無く、認知症はだれもがなり得る脳の機能低下であることを受入れる必要があります。
私たち認定栄養ケア・ステーションからふるは専門職として住民として「食べる喜びを暮らす喜びへ~いただきますのお手伝い~」を理念に活動をしています。今の在宅療養者への支援が地域の高齢者への支援として定着していく事を意識し、この先だれもがなり得る認知症になっても美味しく笑顔で食べられる環境を今から作らなければなりません。それはつまり今、患者と向き合い、充実した支援を提供することに他ならないでしょう。
認知症の栄養支援において、高齢の認知症患者の多くは他の疾患を併せ持っています。さらに、認知症の原因や進行により食行動に異常が見られたり、摂食嚥下機能が低下している場合が多くみられます。
管理栄養士が在宅の場面で認知症患者の支援を行う場合、以下の3点がポイントとなります。
①所持疾患の重度化予防、低栄養予防などの栄養管理
そのために
②食行動の異常や摂食嚥下機能の低下に配慮した食事の安全と安定化
そのために
③食環境の支援者への相談支援による食の確保と継続
本セッションでは②と③を中心に在宅療養者の食の課題を検討していきたいと思います。
WHOの国際的評価ツールであるICF(国際生活機能分類)で在宅の栄養支援を整理すると、「食」に関わる項目のほとんどが「活動と参加」のSelf-careに分類されます。これらはどれが欠けても栄養支援が滞ってしまいます。特に③は高齢者の認知症を支えている多くが老々介護の配偶者や子どもであることに注意が必要です。「食べてくれない」事が家族介護者の自己効力感や肯定感に影響するため、多職種連携によるリスクマネジメントによって支えていく必要があります。また、その際に重要なこととして、私たち専門職の支援が家族介護者の負担ではなく支えとなるように意識をする事が大切です。もちろんSelf-careの面から「食べてくれない」原因についても検討し、認知症の進行に合わせたアプローチを行うことも重要です。
「だれもが住み慣れた地域で自分らしく過ごす」を目的とした地域包括ケアシステム構築が始まって久しいですが、皆様、いつまでも美味しく食べて過ごせる自分の地域づくりに今から一緒に取り組みましょう。