一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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チェアサイドで実践する!口腔機能の低下への対応とお食事指導

2021年6月12日(土) 13:30 〜 14:20 Line C (ライブ配信)

座長:渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室 准教授)

[SS2] チェアサイドで実践する!口腔機能の低下への対応とお食事指導

○上田 貴之1 (1. 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座)

【略歴】
1999年 東京歯科大学卒業
2003年 東京歯科大学大学院歯学研究科修了
2003年 東京歯科大学・助手
2007年 東京歯科大学・講師
2007年 長期海外出張(スイス連邦・ベルン大学歯学部補綴科客員教授)
2010年 東京歯科大学・准教授
2019年 東京歯科大学教授

【主な活動】
一般社団法人日本老年歯科医学会 常任理事・専門医・指導医・学術委員会委員
公益社団法人日本補綴歯科学会 代議員・専門医・指導医・社会保険医療問題検討委員
オーラルフレイルや口腔機能低下症は、障害の一歩手前の段階である。軽微な機能の低下が始まっており、この段階で手を打つことが大切である。しかし、障害のレベルではないため、一見しただけでは低下に気が付かないことも多く、患者さん自身も気にしていないことが多い。そのため、丁寧な医療面接でその兆候をとらえることが求められる。
 口腔機能の低下の兆候の1つとして、「食事の時間が長くなる」ことが挙げられる。また、口腔機能が低下し始めると、歯ごたえがあるものを避け、柔らかい食事を好むようにもなる。歯科医院では、「食べること」について聞く機会が多いため、そのような状態を発見するチャンスが多くあるといえる。歯科医師・歯科衛生士は、食べることに最も近い職種の1つである。日常の診療の中で、食べにくい食品がある、といった話があった際には、ぜひ口腔機能の低下を疑っていただきたい。
 口腔機能の低下が生じると、食事の量が少なくなるだけでなく、食事のバランスも悪くなることが知られている。そのため、高齢者の口腔機能の低下は低栄養に直結するので、注意が必要である。チェアサイドで簡単に栄養状態の評価に利用できるのは、体重と身長から算出できるBody Mass Index(BMI)である。また、6か月で5%以上の体重減少率である場合には、低栄養を疑う。摂取食品多様性スコアや低栄養のスクリーニングツールなども、私たちがチェアサイドで、日常臨床の合間に簡単に実践できる。
 患者が低栄養や低栄養の疑いがある場合、まずは日常的に摂取する食品の種類を増やすように指導するのがよいだろう。しかし、単にたんぱく質の摂取量を増やしましょう、という指導では、頭では理解できても、実際の行動にはなかなか結び付かない。朝のコーヒーを牛乳に変える、お昼ご飯に卵を1つ加えるなど、具体的な提案を心掛けたい。食事内容の改善だけでは栄養状態の改善が難しい場合や調理での工夫が困難な場合には、経口栄養補助食品の活用も有効である。患者の好みや生活習慣に合わせて、たんぱく質やアミノ酸、微量栄養素などの効率的な摂取に役立つだろう。
 今後は、歯科と管理栄養士の協働が重要になっていく。歯科での食事相談にITやAIの活用も注目される。そのような背景のもとに、日本栄養士会が推進している「栄養ケアステーション」について、また、栄養ケアステーションと歯科とのかかわりについても紹介したい。
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