一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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高齢者の口腔内環境改善を目指した超高齢社会におけるS-PRGフィラー含有材料の応用

2021年6月13日(日) 11:30 〜 12:20 Line C (ライブ配信)

座長:水口 俊介(東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野)

[SS4] 高齢者の口腔内環境改善を目指した超高齢社会におけるS-PRGフィラー含有材料の応用

水口 俊介1、○猪越 正直1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【演者1(水口俊介)略歴】
1983年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業

1987年 東京医科歯科大学大学院歯学研究科修了
1989年 東京医科歯科大学歯学部高齢者歯科学講座助手
2001年 米国ロマリンダ大学歯学部 Visiting Research Professor
2008年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全部床義歯補綴学分野教授
2013年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野教授
 現在に至る

【演者2(猪越正直)略歴】
2006年 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業
2011年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全部床義歯補綴学分野修了
2014年 KU Leuven (University of Leuven), Doctoral School of Biomedical Sciences修了
2015年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野 助教
 現在に至る
超高齢社会を迎えた日本では、今後も高齢者人口の増加が予想されている。平成28年の歯科疾患実態調査によれば、残存歯数の増加に伴って、高齢者におけるう蝕罹患者数の増加が示されている。一方、高齢者において義歯装着者の割合は減少しているものの、高齢者人口増加のため義歯装着者数は減少していないと考えられる。このような背景を鑑みると、高齢者の根面う蝕への対応と、義歯装着者の口腔内環境改善は、今後取り組むべき重要な課題であると考えられる。

 株式会社松風が開発したSurface reaction-type Pre-Reacted Glass-ionomer (S-PRG) フィラーは、多機能性ガラス(フルオロボロアルミノシリケートガラス)を微細化及び多孔質ガラス化表面処理を施した後、ポリアクリル酸水溶液と反応させることにより、安定化したグラスアイオノマー相をガラスコアの表層に形成させた3層構造からなるバイオアクティブ新素材である。このS-PRGフィラーは、6種類のイオン(ストロンチウムイオン、ナトリウムイオン、ホウ酸イオン、アルミニウムイオン、ケイ酸イオン、フッ化物イオン)を徐放することにより、歯質強化能、酸緩衝能、抗菌効果を示すことが文献的に示されている。S-PRGフィラー含有材料は、そのバイオアクティブな作用による口腔内環境改善が可能となる材料として期待されている。

 我々は今まで、株式会社松風と共に、S-PRGフィラー含有材料の高齢者歯科分野への応用を進めてきた。まず、根面う蝕への対応として、S-PRGフィラー含有セメントの開発を進め、イオン徐放能を持つ新規根面う蝕修復材料を開発した。また、S-PRGフィラーを義歯安定材に添加することにより、抗菌効果を持つ義歯安定材の開発を進めてきた。さらに、S-PRGフィラーをナノサイズ化した、S-PRGナノフィラーをティッシュコンディショナーに添加することにより、ティッシュコンディショナーへのカンジダの付着を抑制することに成功した。

 本セッションでは、これらの高齢者歯科分野で応用可能なS-PRGフィラー含有材料について紹介させていただき、今後の展望についてお話しさせていただく予定である。