一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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シンポジウム7
地域歯科医療シンポジウム:COVID-19 で語ろう〜どう高齢者を支えるのか〜〈指〉〈日〉

2021年6月13日(日) 15:40 〜 17:00 Line A (ライブ配信)

座長:糸田 昌隆(大阪歯科大学)、平野 浩彦(東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科)

[SY7-1] コロナ禍における高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施や介護予防事業の対応

○秋野 憲一1 (1. 札幌市保健福祉局)

【略歴】
1998年 北海道大学歯学部卒
1998年 北海道大学歯学部付属病院 医員
1999年 北海道立渡島保健所
2001年 国立公衆衛生院専門課程(分割前期課程)修了
2003年 北海道保健福祉部地域保健課 主任技師
2009年 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了(博士(歯学)取得)
2010年 北海道保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課 主任技師
     北海道立岩見沢保健所 兼務
2014年 札幌市保健福祉局保健所 歯科保健担当課長
2015年 厚生労働省老健局老人保健課 医療介護連携技術推進官
     (医療介護連携、介護保険に関わる口腔栄養分野を担当)
2016年 厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室 兼任
2017年 札幌市保健福祉局保健所 母子保健・歯科保健担当部長
2018年 札幌市保健福祉局保健所 成人保健・歯科保健担当部長
2021年 札幌市保健福祉局医療対策室宿泊・自宅療養担当部長兼任
日本老年医学会が提唱した「フレイル」対策は国策として採用され,厚生労働省は「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」により,フレイル対策の具体化を目指している.保健事業と介護予防の一体的実施とは,「市町村が実施主体の介護予防事業」と「各都道府県後期高齢者医療広域連合が実施主体の後期高齢者を対象とした各種保健事業」の一体化を指している.実際のところ,介護予防事業の内容と後期高齢者広域連合が保健事業として実施するフレイル対策の内容は重複する部分もあり,市町村と広域連合でバラバラにやるのは非効率であるので,広域連合が実施するフレイル対策についてはその財源を市町村に交付し,実働は市町村に任せることとなった.一体的実施は,2020年4月から準備の整った市町村から開始されており,2024(令和6)年度までに全国全ての市町村で実施するスケジュールとなっている.
 一体的実施では,フレイル対策の重要な柱として,運動,栄養,社会参加に加えて「口腔」の位置づけが明確化され,歯科衛生士が市町村負担なしで配置できる財源措置がなされるなど,平成18年の介護予防の口腔機能向上サービスの導入以降で最も大きな口腔領域の取組の機能強化を図る施策となっている.
 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の取組は,大きく2つである.
①高齢者の通いの場に,医療専門職を派遣して健康教育やフレイル状態にある者を発見して必要な医療サービスに繋ぐ.
②閉じこもりがちで疾病の重症化リスクが高い在宅高齢者に医療専門職がアウトリーチを行い必要な医療サービスに繋ぐ.
 このように,一体的実施によるフレイル対策は,国による制度設計と財源の裏付けにより,大きく前進することが大変期待されていたが,新型コロナウイルスの流行が直撃し,多くの市町村では事業の導入が遅れている状況となっている.
 歯科衛生士等の医療専門職の派遣先として想定していた「高齢者の通いの場」自体の開催が困難となっており,閉じこもり等による高齢者の全身状態の悪化が危惧されている.
 今回の報告では,このようなコロナ禍における効果的な事業展開の先進事例等を交えながら,オーラルフレイルに関する情報提供のあり方やアウトリーチの活用等を含め,効果的な一体的実施や介護予防事業の展開方法について考察したい.