一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター6

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター6 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-31] ブリッジ脱離・誤飲による摘出術を繰り返した重度認知症患者に対し、残存ブリッジ及び支台歯を抜去した症例

○岡田 芳幸1、小笠原 正2 (1. 広島大学 医系科学研究科 障害者歯科学、2. 松本歯科大学大学院 健康増進口腔科学講座)

【緒言】
 高齢者は口腔機能廃用化により衛生状態が悪化すると,歯科疾患が把握されぬまま補綴物の脱離,誤嚥・誤飲に至ることがある。今回,胃瘻造設後にBr脱離と誤飲を繰り返した要介護高齢者に対して基礎疾患に配慮し,残存Br除去及び支台歯をすべて抜歯した一例を経験したので報告する。
【症例】
 83歳,男性。Br除去を主訴に来院した。身長172cm,体重53kg。II度高血圧,MRSA保菌,リスペリドン服用。77歳時に腰椎圧迫骨折,80歳時に左大腿骨転子部骨折で長期療養後に認知症進行(HDS-R; 4/30), ADL 全介助にて介護老人施設に入所した。その後,誤嚥性肺炎を繰り返し,廃用化が進行したため, 胃瘻を造設した。以来, 経口摂取はなく胃瘻栄養管理を継続中である。20XX年3月及び9月に相次いで下顎臼歯部Brの脱落・誤飲があり緊急摘出術を2度受けた。初診時,上顎Br(⑦⑥5④┴③④5⑥⑦)が残存,両側とも動揺度1度で,支台歯の歯周炎(PPD>4mm:100%)を認めた。口腔粘膜は剥離上皮膜で覆われていた。尚,本発表について患者の代諾者から同意を得ている。
【経過】
 Br動揺は軽度であったが,支台歯は中等度以上の歯周炎であること,口腔機能廃用化により,Br脱落で誤飲・ 誤嚥の可能性が高いこと,既に短期間で2度Brを支台歯ごと誤飲したことから,Br除去と動揺支台歯の抜歯を適応とした。初診日は処置中の誤嚥を防ぐ目的で剥離上皮膜を可及的に除去した。処置当日はMRSA,リスペリドン,高血圧に対して,感染防護ガウン着用,シタネスト選択,間欠的処置で偶発症を回避した。また,注水時は処置部と咽頭部で吸引を行うとともに,Br除去時の落下に備えフロスで結紮した。その後,動揺のない└7を除く全ての支台歯を抜歯し,創部縫合とアモキシシリン投与を行った。
【考察】
 患者は寝たきりで,更なる廃用化と基礎疾患の増悪により今後は処置困難になること予想された。そのため, 保存による有害リスクが抜歯リスクを上回ると考えた。また、行動解釈による意思決定支援も困難であり,施設看護師,家族と協議し,抜歯が最善の利益と判断した。処置中の偶発症回避に加え,処置後も施設と連携し,治癒不全・術後感染予防に努め,抜歯を安全に行えた。剥離上皮膜に対しては介助者に口腔ケアを指導し,誤嚥性肺炎の防止を継続している。(COI開示:なし,倫理審査対象外)