一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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歯科衛生士部門

2022年6月11日(土) 15:00 〜 16:00 優秀ポスター:歯科衛生士部門 (りゅーとぴあ 2F コンサートホールホワイエ)

[優秀P衛生-02] 高齢舌癌患者の周術期口腔機能管理にがん患者の口腔保健に関わる自己効力感尺度(OSEC) を活用した一例

○田中 紘子1、安藤 睦美1、蟹江 仁美1、黒田 茉奈2、龍田 泉希2、関本 愉3、岡本 美英子2、金森 大輔4、吉田 光由2 (1. 藤田医科大学病院 歯科口腔外科、2. 藤田医科大学 医学部 歯科・口腔外科学講座、3. 医療法人宝生会 PL病院 歯科、4. 藤田医科大学 医学部 七栗記念病院 歯科)

【目的】
 自己効力感とは,目標を達成するための能力を自らが持っていると認識することであり,この形成が治療に大きく影響することが言われている。松田らにより開発された「がん患者の口腔保健に関わる自己効力感尺度(Oral health-related self-efficacy scale for cancer patients: OSEC)」は口腔清掃習慣,口腔機能,定期受診,症状に対するコーピング,口腔有害事象の5項目17問(68点満点)から構成された信頼性,妥当性の評価された質問紙である。今回我々は,舌癌の周術期に対してこのOSECを歯科衛生指導に活用することで,口腔衛生状態の改善と行動変容を促すことができた症例を経験したので,ここに報告する。
【症例の概要と処置】
 78歳,男性。左舌癌pT3N0,cM0,G1,stageⅢに対し左舌半切,左頸部郭清,大胸筋皮弁再建術にあたり, 周術期等口腔機能管理を目的に当科初診となった。初診時の口腔内は,残存歯26本,口腔衛生状態やや不良, PCR40.4%,BOP20%と中等度歯周炎であった。セルフケアは1日2回,1年以内の歯科受診歴はあるが,かかりつけ歯科はなく機会受診であった。OSECを活用し周術期口腔機能管理をおこなった。発表にあたり患者本人の同意を得た。
【結果と考察】
 口腔清掃習慣に関する自己効力感は,術前に最大の12点であったが,術直後に舌の腫脹や流涎を理由に6点と低下した。そこで,セルフケアは可能な範囲でよいことを伝え,清掃困難部位は介助することで,術直後もPCRは上昇せず経過した。その後,歯科衛生指導により歯間ブラシを用いたセルフケアも可能になり,口腔清掃習慣に関する自己効力感は退院時には10点まで回復した。その結果,退院時にはPCR21.2%,BOP0%,退院2週間後の外来受診時にはPCR16.3%でセルフケアを維持できた。定期受診に関する自己効力感は術前12点から,退院時に最大の16点と上昇し,現在も定期的な外来受診が継続できている。これらの結果から,本症例患者に対しOSEC を活用することで,良好な口腔管理を達成することができた。また,周術期に繰り返し評価することで,自己効力感の変化が把握でき,適切な対応につなげられる可能性が示せた。今後は症例を重ね,さらに検討していきたい。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)