一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ランチョンセミナー5
健康長寿 鍵は“食力” ~オーラルフレイル予防の狙い~

2022年6月12日(日) 13:00 〜 14:00 第1会場 (りゅーとぴあ 2F コンサートホール)

座長:平野 浩彦(東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科部長/研究所研究部長)

共催:サンスター株式会社

[LS5] 健康長寿 鍵は“食力” ~オーラルフレイル予防の狙い~

○飯島 勝矢 (東京大学 高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センター)

【略歴】
1990年東京慈恵会医科大学卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座 助手・同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、2016年より現職の東京大学高齢社会総合研究機構教授。2020年より同機構・機構長および未来ビジョン研究センター教授。

内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員、厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」「全国在宅医療会議」「人生100年時代に向けた高齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」構成員、日本学術会議「老化分科会」ボードメンバーを兼務。

専門は老年医学、老年学(ジェロントロジー:総合老年学)、特に健康長寿実現に向けた超高齢社会のまちづくり、地域包括ケアシステム構築、フレイル予防研究、在宅医療介護連携推進と多職種連携教育。近著『在宅時代の落とし穴 今日からできるフレイル対策』(KADOKAWA)、『東大が調べてわかった衰えない人の生活習慣』(KADOKAWA)
【抄録】
健康長寿実現のため、「食」の視点だけでも健常期からの食の重要性に関する再認識、そして重度要介護者への多職種協働による食支援まで、一連の底上げが幅広く求められる。演者の研究において、早期の所見として歯科口腔分野の軽微な機能低下や食の偏りも認められた。それらのエビデンスも踏まえ新概念『オーラルフレイル』を打ち立て、高齢者の食力向上のため口腔機能への今まで以上の総合的機能論でこだわりたい。また2018年4月より「口腔機能低下症」が保険収載されている。2020年春には新政策「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」が施行され、その施策構築にも携わり、後期高齢者向け質問票(いわゆる『フレイル健診』)も作成したが、その中にもオーラルフレイルの内容を盛り込んだ。健康長寿のための3つの柱「栄養(食と口腔)・運動・社会参加」に対して、顕著なフレイルになる前から意識変容を促す必要がある。フレイル予防はまさに『総合知によるまちづくり』そのものであり、国家戦略として取り組むべきものである。さらに、従来の健康情報のアプローチ(地域での健康増進および介護予防などの取り組み含む)では、なかなか国民の行動変容につながっていない現実も報告されており、これら健康増進~介護予防の一連の健康施策においても改めて工夫されたアプローチが求められる。そのなかで、コロナ禍2年間を通して高齢者の過剰な自粛生活長期化による生活不活発を基盤とする「コロナフレイル」が顕著に認められ危惧される中、今後、このオーラルフレイル予防をいかに国家プロジェクトとして位置づけ、国民にしっかりと落とし込み根付く運動(ムーブメント)としていくのか、そして、食を軸とする栄養管理の重要性および食支援対策が各地域で均一の支援システム化されることを目指しており、その戦略性も含め本講演で言及したい。