[LS7-2] 咀嚼能力と全身の健康との関わり
【略歴】
2010年 大阪大学歯学部 卒業
2015年 大阪大学大学院歯学研究科博士課程 修了
2018年 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 助教
現在に至る
2010年 大阪大学歯学部 卒業
2015年 大阪大学大学院歯学研究科博士課程 修了
2018年 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 助教
現在に至る
【抄録】
咀嚼とは,食物を口腔内に取り入れ上下の歯列間に保持し,これを切断・破砕・粉砕し,唾液との混和を行いながら食塊を形成し嚥下動作を開始するまでの一連の作業と定義されており,それらの機能を発揮する能力を咀嚼能力という.咀嚼能力の低下により,摂取可能な食品の選択肢は狭まり,ひいては栄養摂取に悪影響を及ぼし,それにより全身的な健康状態が低下する.
一方,わが国における死因統計を見ると,脳卒中や虚血性心疾患に代表される動脈硬化性疾患による死亡者は,全体の約25%を占める.また,動脈硬化性疾患は,高齢になるとともに発症のリスクが増加するため,要介護になる原因として,認知症に次ぐ高い割合を示す.したがって,動脈硬化性疾患の予防は,個人の生活の質を維持するだけでなく,医療・介護による社会的負担を軽減する上で,重要な課題であると考えられる.
前述のとおり,咀嚼能力の低下は食習慣の偏りを通じて栄養バランスの悪化を招く恐れがあることから,動脈硬化性疾患の発症や重症化のリスクとなることが推察される.そこで演者はこれまで,「咀嚼能力の低下が動脈硬化性疾患のリスクとなる」という仮説を検証するために,国立循環器病研究センターが実施している循環器コホート調査「吹田研究」参加者を対象に,検査用グミゼリー(UHA味覚糖社,大阪,日本)を用いた咀嚼能力測定を行い,咀嚼能力と動脈硬化性疾患との関連について検討を行ってきた.吹田研究とは,我が国の循環器疾患予防対策を推進するため,国立循環器病研究センター予防健診部と大阪府吹田市医師会により平成元年から開始された吹田市民のランダムサンプルを対象としたコホート研究である.その中で,歯科研究は平成20年より参画し,現在まで2300名のベースラインデータ,および1300名のフォローアップデータ(ベースライン時から4年以上経過)を収集してきた.
本セミナーでは,吹田研究のデータに基づく解析結果から,口腔内のどのような因子が咀嚼能力へ影響を及ぼすのか,そして,動脈硬化やメタボリックシンドロームなどの全身疾患と咀嚼能力との関連について得られた知見を報告する予定である。本セミナーを通して,全身の健康のバイオマーカーとして咀嚼能力を正しく評価し,維持することの意義をお伝えできれば幸いである。
咀嚼とは,食物を口腔内に取り入れ上下の歯列間に保持し,これを切断・破砕・粉砕し,唾液との混和を行いながら食塊を形成し嚥下動作を開始するまでの一連の作業と定義されており,それらの機能を発揮する能力を咀嚼能力という.咀嚼能力の低下により,摂取可能な食品の選択肢は狭まり,ひいては栄養摂取に悪影響を及ぼし,それにより全身的な健康状態が低下する.
一方,わが国における死因統計を見ると,脳卒中や虚血性心疾患に代表される動脈硬化性疾患による死亡者は,全体の約25%を占める.また,動脈硬化性疾患は,高齢になるとともに発症のリスクが増加するため,要介護になる原因として,認知症に次ぐ高い割合を示す.したがって,動脈硬化性疾患の予防は,個人の生活の質を維持するだけでなく,医療・介護による社会的負担を軽減する上で,重要な課題であると考えられる.
前述のとおり,咀嚼能力の低下は食習慣の偏りを通じて栄養バランスの悪化を招く恐れがあることから,動脈硬化性疾患の発症や重症化のリスクとなることが推察される.そこで演者はこれまで,「咀嚼能力の低下が動脈硬化性疾患のリスクとなる」という仮説を検証するために,国立循環器病研究センターが実施している循環器コホート調査「吹田研究」参加者を対象に,検査用グミゼリー(UHA味覚糖社,大阪,日本)を用いた咀嚼能力測定を行い,咀嚼能力と動脈硬化性疾患との関連について検討を行ってきた.吹田研究とは,我が国の循環器疾患予防対策を推進するため,国立循環器病研究センター予防健診部と大阪府吹田市医師会により平成元年から開始された吹田市民のランダムサンプルを対象としたコホート研究である.その中で,歯科研究は平成20年より参画し,現在まで2300名のベースラインデータ,および1300名のフォローアップデータ(ベースライン時から4年以上経過)を収集してきた.
本セミナーでは,吹田研究のデータに基づく解析結果から,口腔内のどのような因子が咀嚼能力へ影響を及ぼすのか,そして,動脈硬化やメタボリックシンドロームなどの全身疾患と咀嚼能力との関連について得られた知見を報告する予定である。本セミナーを通して,全身の健康のバイオマーカーとして咀嚼能力を正しく評価し,維持することの意義をお伝えできれば幸いである。