The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター発表)

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ポスター発表8 症例・施設

[P8-20] 楽しみレベルの経口摂取を行っていた胃ろう者に対して地域連携が困難となった1例

○行岡 正剛、前田 知馨代、棚橋 幹基、鎌田 春江、野田 恵未、岩瀬 陽子、安田 順一、玄 景華 (朝日大学歯学部障害者歯科)

【目的】
高齢者の疾病発症時や回復後に患者のニーズをできるだけ高いレベルに達成するために,多職種による地域連携の枠組みを検討することは重要である。今回,朝日大学医科歯科医療センターから訪問診療による摂食嚥下リハビリテーションを実施した胃ろう者が,在宅から入院施設, 介護施設へと環境の変化に伴い,介護施設入所後に地域連携が困難となり,経口摂取が中断となった症例について報告する。なお,発表について本人から文書による同意を得ている。
【症例の概要と処置】
77歳男性。身長147cm,体重45kg。初診:2019年12月。主訴:楽しみレベルでもいいので口から食べたい。既往歴及び現病歴:1988年に脳梗塞(左上下肢麻痺,構音障害), 2007年に脳幹梗塞, 2017年に薬剤性横紋筋融解症, 2018年に多発脳梗塞後遺症,脂質異常症,正常水頭症,パーキンソンニズムを発症し,経口摂取困難のため2019年5月に胃ろう造設となった。その後に近医の訪問STにより直接訓練を開始するも誤嚥性肺炎で2019年7月まで入院した。経過:初診時より在宅環境下でVE検査を含めた摂食嚥下機能評価を実施し,ゼリーなどで直接訓練を開始した。2021年5月にはコーヒーゼリーやムース食を楽しみレベルで経口摂取が可能となった。その間に訪問看護師,訪問STとの連携とデイサービスでの経口摂取の導入も行った。
【結果と考察】
介護者の妻が体調不良で入院したため,2021年7月からショートステイを利用したが,転倒して骨折したため入院となった。その後も家族による在宅介護が困難と判断され, 2021年9月より介護老人保健施設に入所した。その間に楽しみレベルの経口摂取が中断となった。家族の介護力の限界とともにコロナ渦での施設環境の対応が困難となったケースである。介護施設側に患者診療情報提供を行い,経口摂取が維持できるよう働きかけたが,経口摂取対応はできないとのことであった。要介護高齢者の生活環境として,在宅環境を中心に入院対応や施設入所が考えられる。それぞれの環境下での摂食嚥下リハビリテーションの役割や対応は異なり, 多職種連携による円滑な地域連携の維持・構築は重要である。今後は生活環境の違いを超えて,さらなるシームレスな支援と連携が課題と考える。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)