一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター6

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-33] 在宅での義歯調整と栄養管理により全身状態が改善した症例

○鎌田 春江1,2、玄 景華1 (1. 朝日大学歯学部口腔病態医療学講座障害者歯科学分野、2. 中町歯科)

【緒言・目的】
 オーラルフレイルと全身のフレイルは密接に関わっており,摂食嚥下障害に移行すると栄養障害に陥り,さらにフレイルが進むといった悪循環に陥る。今回, 義歯性潰瘍と栄養障害によりフレイルが進行した症例に対し, 在宅にて義歯調整と栄養管理を行い,全身状態が改善した症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 83歳男性。72歳時にラクナ梗塞,糖尿病,80歳時に脳梗塞,左半身不全麻痺となった。介助(手引き)で短距離の自立歩行可能。82歳時に脊椎圧迫骨折にて入院,退院後徐々に摂食困難となり,特に初診日2か月前より食事量が減少し,著明な体重減少(2か月で-6.9 kg)を示した。ケアマネージャーからの相談にて居宅訪問診療を行った。初診時体重43kg,BMI:18.1%,通常体重79.6%であり, 中等度の栄養障害であった。初診の2か月前より尿路感染,蜂窩織炎,疥癬を発症し,薬疹やかゆみによる不眠があり,糖尿病と低栄養状態による免疫力の低下が疑われた。食形態は2か月前までは普通食を摂取していたが,初診時はペースト食であり,口腔内への溜め込みから食事に1時間以上かかっていた。口腔内は唾液の貯留が著明で全体的に粘膜発赤がひどく,下顎総義歯の床縁下に深い義歯性潰瘍を認めた。義歯の調整・口腔衛生指導を行い,口腔内の状況と低栄養の疑いについて主治医に情報提供した。HbA1cは7.0前後で推移しており、医師の判断でHbA1cの経過をみながら栄養補助剤の処方が行われた。11月まで体重減少が続き,最終的に39kg(BMI:16.4)まで体重減少したが,その後1年かけて5.5kg 増加し,食形態も軟飯普通食まで回復した。伝い歩きにて自立歩行が可能となり,認知面でも会話応答や指示理解従命までの時間が5秒以上から1秒ほどに短縮された。舌圧は測定不可の状態から19.3kPaまで回復した。不眠にて断られていたショートステイにも行けるようになり,介護負担も軽減した。なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考 察】
 今回の症例は, 骨折入院を機に義歯不適合・オーラルフレイルを経て低栄養・摂食嚥下障害にまで陥り,全身状態が悪化した症例と考えられる。オーラルフレイルと栄養障害,全身のフレイルの関連性,定期的な口腔管理の必要性が示唆された症例であった。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)