一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師更新ポスター

2023年6月16日(金) 11:30 〜 18:00 ポスター会場 (1階 G3)

※発表なし掲示のみ

[摂食更新P-8] 介護老人保健施設における経口維持支援の取り組み

○大平 真理子1 (1. 東京歯科大学 パーシャルデンチャー補綴学講座)

【緒言・目的】
 2015年の介護報酬改定により,摂食嚥下障害を有する施設入所高齢者の経口維持支援充実の観点から,食事場面の観察(ミールラウンド)やカンファレンスの実施が評価されることになった。当院では2016年から都内の介護老人保健施設(定員120名)で,ミールラウンドや職員への教育活動など経口維持管理に関する支援活動を行っている。今回,当院で実施している経口維持支援に関する取り組みを報告する。
【症例および経過】
 経口維持支援の対象者は,介護職員や看護師が食事時の観察で問題を認めた者や,栄養士による体重や食事摂取量確認時に問題を認めた者である。最初に施設職員が嚥下会議を開催し,専門的な介入の必要性が認められた場合,施設主治医より歯科医師へ診療依頼があり,歯科医師と施設スタッフによるミールラウンドの対象となる。6年間で対象者は48名,平均年齢は84.5歳,実施回数は平均9.5回であった。嚥下会議で抽出された問題点で多かったのは,食形態が適切かが22件,食事時のむせが16件,食形態アップが可能かが12件であった。初回のミールラウンド後の対応として多かったのは,食形態変更なしが15件,食形態変更が14件,患者指導が11件,食具の工夫が10件,食事介助方法の指導が10件,栄養士への助言が10件であった。食事中の頻回のむせや頸部聴診で呼吸音や嚥下音の変化から誤嚥を疑い,嚥下内視鏡検査が必要と判断したのは10件だった。ミールラウンドの結果は書面で主治医へ報告している。ミールラウンド導入前には全職員向けの摂食嚥下機能講習会を実施し,食事場面の観察ポイントを伝え,チェックリストを作成した。新しい食形態導入のために栄養士と試食会を開催し,食形態は5段階から8段階へ増加した。嚥下内視鏡検査時は担当看護師と介護士,栄養士,言語聴覚士が同席し,問題点の共有に努めている。また,歯科衛生士と口腔衛生管理についての講習会や実技指導を実施した。
【考察】
 6年間の経口維持支援により職員の意識改善が進み,施設で対応できる摂食嚥下障害を有する入所者数も増え,ミールラウンド前の初期対応も適切に行えるようになってきた。毎日の安全な経口摂取を継続するために,摂食機能療法専門歯科医師として職員への支援やミールラウンドでの適切な介入を続けていきたい。
(COI開示:なし)(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号 1151)