一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

講演情報

一般演題(口演発表)

一般演題(口演発表) » [一般口演2] 実態調査

一般口演2
実態調査

2023年6月17日(土) 13:25 〜 14:15 第3会場 (3階 G304)

座長:
河相 安彦(日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座)
内藤 真理子(広島大学大学院医系科学研究科口腔保健疫学)

[O2-4] Bayesian Cohort Modelによる日本人一人平均処置歯数のCohort分析, 歯科疾患実態調査資料を用いて

○那須 郁夫1、中村 隆2 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 統計数理研究所)

【目的】
本研究は,歯の喪失予防の研究である。著者らはこれまでに,歯科疾患実態調査資料を用いた歯数のcohort分析を重ねて,日本人の歯数の改善,特に最近の女性の男性に対する歯数優位な状況を指摘した。今回は第二次予防の観点から,日本人一人平均処置歯数の変遷を時代・年齢・出生世代に着目して検討した。
【方法】
全11回の資料のうち,一人平均処置歯数を充填歯数と金属冠歯数に分けて,分析の基礎となる性・年齢別(5歳以上の17年齢階級×11回)のcohort表を作成した。等計量線図による俯瞰的観察をもとに,中村のBayesian Cohort Modelによりcohort分析を実施し,時代・年齢・cohortの3効果を分離して検討した。
【結果と考察】
等計量線図:充填歯数;男女とも世代差に特徴のある様相を示した。すなわち,大正生れから平成10年生れまでの間,齲蝕多発世代である昭和45年生れ世代を最高とする斜め方向の尾根状態を呈した。金属冠歯数;金属冠歯の世代は充填歯より全体に20年前の世代となり,明治後期から昭和55年生れまでの範囲をとり,特に男性において齲蝕の少ない昭和15年生れ世代が,金属冠歯の少ない世代として示された。
Cohort分析:充填歯数;3効果のうち,cohort効果が最も強く,大正生れに始まり昭和40年代生れの齲蝕多発世代で最高を示したあと減少する単純な山型を示した。この齲蝕多発世代において,女性の充填歯数は男性より多い。時代効果および年齢効果は平坦であり,歯数は女性がやや上回った。金属冠歯数;時代効果は,変化の幅は小さく,調査開始以来最近まで女性が男性を上回った。年齢効果は,金属冠歯が増加する30歳代後半から60歳代までを通じて,女性が男性を上回った。cohort効果は,大正生れから上昇し,昭和40年代生れまで,昭和15年生れ前後でやや減少(男)あるいは停滞(女)するものの歯数を増やした。金属冠歯の多い世代のみならず,少なくなった昭和50年代生れ以降においても,女性が男性を上回った。
歯の喪失予防の立場では,先ず健全歯であることは必要条件の第一であろうが,今回の結果から,齲蝕に対する適切な処置が適切な時期に施されていたことを前提とする,歯科治療(行動)もあながち否定できないと思慮した。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)