一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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課題口演1
地域包括ケア・地域連携・多職種連携

2023年6月17日(土) 08:45 〜 10:05 第3会場 (3階 G304)

[課題1-1] 高齢誤嚥性肺炎患者における、繰り返す肺炎が経口摂取度に与える影響

○山口 浩平1、今田 良子1、中川 量晴1、吉見 佳那子1、長谷川 翔平1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学 大学院摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
高齢者の肺炎の約8割は誤嚥性肺炎と言われており,繰り返すことで徐々に状態が悪化していくことが特徴の一つである。しかし,高齢誤嚥性肺炎患者において,入院時の誤嚥性肺炎の既往,院内における再発など繰り返される肺炎が経口摂取度に与える影響は明らかではない。本研究の目的は,急性期,生活期で繰り返される肺炎が患者の経口摂取度に与える影響を明らかとし,誤嚥性肺炎による状態悪化を防ぐため,病院と地域の切れ目ない支援の重要性を検討することである。
【方法】
2021年4月から2022年3月までに,急性期医療を中心に地域医療を支える基幹的病院K医療センターに誤嚥性肺炎の診断で入院した,65歳以上の患者が対象だった。基本情報に加え,入・退院時の経口摂取度,虚弱度,肺炎重症度,口腔衛生状態,誤嚥性肺炎の既往の有無,入院中の再発の有無を記録した。経口摂取度は,Function Oral Intake Scale (FOIS),虚弱度は,Clinical Frailty Scale(CFS)、肺炎重症度は、Pneumonia Severity Index (PSI)、口腔衛生状態は、Oral Health Assessment Tool (OHAT)で評価した。入院時,退院時のFOISに対する誤嚥性肺炎既往の有無,入院中の再発の有無の影響を明らかにするため重回帰分析をした。
【結果と考察】
対象者は83名(男性48名、平均年齢84.6±8.0歳)だった。退院した71名のうち,誤嚥性肺炎の既往もあり,入院中に再発した者の割合は7%だった。重回帰分析の結果,入院時FOISと誤嚥性肺炎の既往の有無(β = -0.22, p = 0.034),退院時FOISと入院中の再発の有無(β = -0.40, p < 0.001 )が有意な関連があり,いずれの解析でも年齢,CFS,PSIも有意な説明変数だった。高齢誤嚥性肺炎患者は,肺炎を繰り返すことで,FOISが低下していくことが明らかとなった。よって,経口摂取度を低下させないためにも,急性期,生活期を問わず,肺炎を再発させない管理が重要である。病院,地域で質の高い口腔ケアや摂食嚥下リハビリテーションを継続して提供できるシステムが必要である。
(COI開示:なし)
(順天堂大学東京江東高齢者医療センター 倫理審査委員会承認番号111-10)