一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-02] デノスマブに関連した薬剤関連顎骨壊死に咬合過負荷にも配慮した保存的治療を行った症例

○釘宮 嘉浩1、平野 浩彦2 (1. 国立長寿医療研究センター歯科口腔外科部、2. 東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科)

【緒言・目的】
 多発性骨髄腫(MM)は,高カルシウム血症や腎不全,貧血,骨病変といった臓器障害を生じる。骨関連事象への対応としてデノスマブあるいはゾレドロン酸の投与が推奨されている。今回,MMの患者においてデノスマブに関連した薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を経験したので,その臨床経過を報告する。
【症例および経過】
 2021年5月当院血液内科でMMと診断され,同年7月よりデノスマブの投与を開始した。2022年2月4日下顎左側大臼歯部歯肉より排膿を認め,当科初診となる。同日より口腔衛生管理を開始した。同年7月12日申請者初診となる。口腔内に腐骨の露出なく┌457に重度辺縁性歯周炎や根尖病変は認めなかった。同年8月9日┌7部根尖相当部舌側歯肉にφ2mm×2mmの腐骨が出現し,MRONJステージ1と診断した。同日撮影のCTで腐骨相当部に皮質骨の不連続性を認めた。血液内科主治医と協議し同日よりデノスマブの投与を中止した。同年11月1日CTで┌567根尖側海綿骨に骨融解像と┌567部根尖相当部舌側歯肉にφ40mm×20mmの腐骨分離を認めたため,腐骨除去術を実施した。また咬合接触状態の診査で┌⑤6⑦に前方運動時の強接触を認めたため咬合調整を実施した。その後,新たな腐骨の露出はなく2023年5月15日撮影のCTにて2022年11月と比べて下顎骨の透過性の減少が確認された。同年12月19日撮影のCTで骨の透過性の正常化,皮質骨の連続性の回復が確認された。骨分離により┌7の近遠心根の舌側面が口腔内に露出した。根面う蝕のリスクについて説明し,セルフケア時に歯根露出部を意識してブラッシングするように指示した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 顎骨壊死検討委員会のポジションペーパーにおいて,MRONJのリスク因子として過大な咬合力が報告されている。腐骨発生部付近の固定性補綴装置の支台歯には重度辺縁性歯周炎や根尖病変が認められなかったことから,加齢に伴う咬耗の進行と咬合接触面積の増大によって固定性補綴装置に加わる咬合力が増大していた可能性がある。口腔衛生管理と分離腐骨の除去に加えて咬合調整を実施したことで,MRONJの拡大を予防し患者の口腔関連QOLの低下を防げた可能性があると考えられる。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)