The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

Fri. Jun 28, 2024 2:40 PM - 4:10 PM ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-12] コーヌスデンチャーの内冠脱離に対し,磁性アタッチメントを用いて修理した1症例

○村瀬 玲奈1、中根 綾子1 (1. 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言・目的】
 コーヌスデンチャーは歯科インプラント治療が一般的になる前に選択された治療法の一つであり,高齢者の義歯にしばしば見かける治療法である。2021年より磁性アタッチメントが保険適応となり,選択しやすい治療法となった。コーヌスデンチャーは外冠と内冠の精密な適合を利用して維持力を発揮するため修理の難易度が高く新製に至ることが多い。本患者は高齢であり,長年使い慣れた義歯を新製した場合に受け入れられるかが不安,という背景を踏まえ,現在使用中の義歯を継続使用する目的で磁性アタッチメントを装着し,維持安定を求めた。
【症例および経過】
 92歳,女性。2020年10月初診。大腿骨骨折,高血圧,心不全の既往あり。大腿骨骨折後,歩行困難となったことをきっかけに歯科訪問診療依頼あり。主訴は上下の義歯が緩い。上顎は残存歯全てにコーヌス内冠が装着されたコーヌスデンチャーを使用,下顎はパーシャルデンチャーを装着。義歯の緩みに対し応急処置を実施し経過観察中であったが、2022年8月上顎義歯を取り外す際に13の内冠が脱離,コーヌスデンチャーの維持力が低下した。食形態は刻み食,全粥,水分に薄いとろみを付与。食思の低下によりBMIは16.3であった。13は一部欠け内冠の再合着,新製は困難であったが,支台歯は骨植良好につき磁性アタッチメントを活用し,義歯の維持を図るよう試みた。修理したコーヌスデンチャーは適切な維持力を発揮し機能が回復され,2023年1月現在日常生活に支障なく使用できている。義歯修理後は常食,米飯に食形態がアップし水分にとろみ付与なし。2023年2月にはBMIは19.6に回復した。なお本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 コーヌスデンチャーの修理に磁性アタッチメントを利用したところ予後は良好であったが,磁性アタッチメント装着の際には一定の手技や留意点があることがわかった。義歯側に磁石を装着する際にデンチャー側のトンロ形成が重要であるが,留意点についてはあまり周知されていない。また今回は使い慣れた既存義歯を利用したことで早期の義歯修理が叶った。違和感なく義歯が使用できたため,比較的早く低栄養状態からの脱却に寄与することができたと考える。
(COI 開示:なし) (倫理審査対象外)