一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-23] 認知症進行に伴い生じた嚥下障害に対して,舌圧変化を指標とした舌運動訓練により意思疎通の改善をみた一例

○二ノ倉 欣久1,3,4、玄 景華2,4 (1. 北陸大学・医療保健学部、2. 朝日大学・歯学部口腔病態医療学講座・障害者歯科学分野、3. 名古屋歯科保健医療センター、4. 東海学院大学・人間関係学部心理学科・言語聴覚分野)

【緒言・目的】 舌圧最大値は口腔機能評価の有用な指標として普及しつつある。しかし,舌圧が低下した高齢者は最大舌圧だけではその正確な評価は難しい。舌圧の時系列情報活用の観点から,口頭指示理解困難な認知症患者においてその継時的変化を指標とし舌運動訓練を継続したところ, 意思疎通改善をみた一例を経験した。【症例および経過】93歳女性。疾患・障害:Alzheimer型認知症, 胃ろう管理下Alb>4.0g/dLを維持。既往歴:尿路感染反復に伴う敗血症,誤嚥性肺炎。現病歴:2型糖尿病,高血圧・高脂血症,CKDに伴う高K血症。主訴:むせ多い。全身状態:認知症進行により意思疎通困難, 要介護度5,覚醒レベルJCSⅡ-10から30相当を推移。初診時口腔内所見:無歯顎,義歯使用なく多数の残根歯と周囲に炎症みられ,痂皮付着や舌苔着色は著明で口腔衛生状態不良であった。舌口唇に不随意運動みられ,吸啜反射様の原始反射が容易に反復出現した。口腔外所見:開口保持困難,咽頭残留音が明瞭に聴取され,口腔顔面の運動機能低下を認めた。経過:訪問診療下, 口腔ケア継続により口腔衛生状態とJCSⅡ-10相当の覚醒改善をみたため,間接嚥下訓練を開始した。舌圧を視覚的にフィードバックしつつ口頭合図1回目を契機とし舌を挙上し合図2回目まで維持を1試行とし,最大5試行を1セットとし最大5セット遂行を目標に訓練継続した。週1回の訓練継続2か月後に課題遂行可能となった。この間,舌圧計最大値は10kPa前後を推移し,舌圧>10kPaの持続時間は増加した。3か月後最大舌圧20kPaを記録し,喉頭挙上の量と回数が改善し,咽頭残留音はほぼ聴取されなくなった。4か月後胃ろう経管栄養管理併用下訓練食を用いた直接嚥下訓練に移行した。6か月後に咀嚼開始食品をほぼ全量摂取可能となり,自発話増加や食嗜好の意志表出萌芽がみられるに至り,一定水準のコミュニケーションが成立した。【考察】 認知症進行例では舌圧検査実施は困難と予想される。本症例は吸啜反射様の原始反射の亢進を利用しプローベを舌運動評価の指標として利用できたと考える。AAC手段として、舌圧を視覚的にフィードバックすると同時に、検査値を時系列的に記録・精査することで舌圧の過渡的特性に着目し,その訓練効果の評価に活用できたと推察する。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)(本発表の文書による同意済)