The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

Fri. Jun 28, 2024 2:40 PM - 4:10 PM ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-31] 進行する嚥下障害に対し摂食嚥下リハビリテーションによるQOL維持を図った高齢パーキンソン症候群の一例

○岩下 由樹1、梅本 丈二1 (1. 福岡大学病院 摂食・嚥下センター)

【緒言・目的】
 進行性核上性麻痺(PSP)は,動作緩慢,筋強剛,仮性球麻痺,認知症をもたらす中枢神経系変性疾患で,80%に嚥下障害が見られる。PSPに起因する嚥下障害の進行に対し,摂食嚥下リハビリテーションによるQOL維持を図ったので報告する。
【症例および経過】
 72歳,女性。X年9月に自宅で転倒,上顎前歯部を打撲し,近医歯科より当科を紹介受診。└1自然脱落と└2歯根破折を認めた。また,同月当院脳神経内科にてパーキンソン症候群が疑われ精査開始(BMI:17.8kg/m2,Alb:3.0g/dL,MMSE:評価困難)。患者に発語はなかったが,呼びかけに追視は認められた。内服困難に対し同科から嚥下機能評価を依頼された。自宅では軟飯食摂取,とろみ剤の使用はなく,薬は簡易懸濁して内服していた。舌圧は9.2kPa,嚥下造影検査(VF)では頸部後屈が著明で,嚥下反射の惹起遅延,中間とろみ水での不顕性誤嚥を認めた。食事は姿勢30°でミキサー食(学会分類:2-1,FOIS分類:L4),水分は濃いとろみに調整した。介助者に食事時の姿勢と食形態調整,とろみの付与方法を指導し,└2を抜歯した。10月,誤嚥性肺炎にて他院に入院,絶食補液管理となった。当院脳神経内科へ転院時,BMI:13.7 kg/m2,Barthel Index:0点。STによる摂食機能療法を開始,後頚部のストレッチや口腔運動訓練を実施した。経管栄養開始後(FOIS分類:L2,Alb:2.9g/dL) ,VF再評価では咀嚼がみられず,咽頭への送り込みは緩慢で,嚥下反射の惹起遅延,濃いとろみ水で喉頭侵入,ゼリーで誤嚥を認めた。栄養管理目的や楽しみレベルの経口摂取は困難であり(FOIS分類:L1),発声訓練や咽頭アイスマッサージを行なった。PSPと最終診断され,胃瘻造設目的に転院した(BMI:13.7kg/m2)。なお,本報告の発表について代諾者から文書による同意を得ている。
【考察】
 PSPは薬物療法が奏功しにくく,進行が速く,長期的管理が難しい。本症例は既に進行期であったが,それまで嚥下機能の評価や食形態調整に関する情報提供はなかった。転倒による外傷歯の抜歯と,急速に進行する嚥下障害に対する評価と摂食機能療法が,患者と家族への状況把握の手助けとなり胃瘻造設の受け入れに繫がった。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)