一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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歯科衛生士部門

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (大ホールC)

[優秀P衛生-03] 主介護者の介護負担感に対し歯科衛生士の気づきから多職種連携に繋げた一例

○佐藤 穂香1、中野 有生1、釘宮 嘉浩1、村上 正治1、中村 純也1 (1. 国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部)

【緒言・目的】
 医療費削減と患者のニーズから在宅療養患者が増加している。しかし在宅療養を継続するためには,要介護者に対する医療的な支援だけでなく,主介護者に対する精神的な支援も重要である。今回,歯科受診時に主介護者の在宅介護における負担感に歯科衛生士が気づき,多職種連携に繋げた症例を報告する。
【症例および経過】
 81歳,女性。パーキンソン病により当院に通院中。主介護者である娘が介護サービスを活用しながら在宅介護を行っていた。X年に歯科衛生士による口腔衛生管理を開始した。X+10年,徐々に主介護者の介護に関する負担の訴えが増加した。特に食べられる食品の減少や食べこぼし等,食事に関する不安やストレスが多くを占めた。当時の介護度は要介護4,Hoehn&Yahrの重症度分類は5度,Body Mass Indexは20.8kg/m²であった。口腔機能を評価したところ,口腔機能低下症に該当した。そこで患者が普段自宅で摂取している食事の一部を持参してもらい,実際の食事場面をチェアサイドで観察したところ,全身の不随意運動が強く取り込み不良が認められた。また咀嚼運動は拙劣で緩慢,口腔期が延長し吐き出すこともあった。栄養評価では,GLIM基準に基づき評価し,重度低栄養に該当した。Zarit介護負担尺度における評価では51点と高く,主介護者の介護負担が著しく大きいことが判明した。この時点で,神経内科主治医に情報提供を行った。歯科衛生士の評価結果をもとに,言語聴覚士による嚥下機能評価と食形態の決定,管理栄養士による栄養管理および介護負担を軽減するための食事支援が開始された。介護負担の評価と多職種による適切な支援により,食べられる食品の増加,食べこぼしの改善,食事時間の短縮,体重の維持が可能となった。その結果,主介護者からは食事の対応を知れて安心し,気持ちが楽になったと発言があった。本報告の発表について患者本人と家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例では,主介護者が抱える介護負担感に歯科衛生士が気づいたことで,在宅介護の限界を迎える前に,多職種の支援に繋げることができた。歯科衛生士は,医学的視点とケア的視点をもつことで,医療と生活の両面から患者やその家族を支えることが出来ると考える。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)