一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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一般口演3
実態調査

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 第4会場 (107+108会議室)

座長:大久保 真衣(東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室)、権田 知也(大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者学講座)

[O3-3] 85歳以上の超高齢者における,口腔の健康とフレイルの関連性

○吉田 貴政1、西尾 健介1、伊藤 智加1、岡田 真治1、柳澤 直毅1、西川 美月1、阿部 由紀子2、新井 康通2、飯沼 利光1 (1. 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座、2. 慶応義塾大学医学部百寿総合研究センター)

【目的】
 我が国では,高齢化率の高さや介護期間の長期化による医療費の増大が問題となっており,この問題を解決するべく,健康長寿に繋がる多くの研究が実施されてきた。歯科では残存歯数や咀嚼機能の維持がフレイル発症を抑制するなど,口腔の健康の重要性が数多く報告されている。しかし,これらの報告は80歳未満の高齢者を被験者としているものが多く,さらなる高齢者を対象とした研究が望まれている。そこで我々は,慶応義塾大学百寿総合研究センターとの共同研究である,川崎市における高齢者の暮らし方と健康に関する学術調査(KAWP)で,85歳以上の超高齢者を対象に,口腔の健康とフレイルの関連性を検討した。

【方法】
 本研究は,2017年3月~2018年12月の間に実施したKAWPのベースライン調査に参加した被験者のうち,歯科データを採取した1004名を分析対象とした。口腔の健康の評価は①残存歯数 (上顎,下顎,上下顎)②咀嚼問題の有無③嚥下問題の有無④食事の喜び,についてアンケートを行った。フレイルの評価はJ-CHS基準で行い,被験者をnon-frailty (robust,pre-frailty), frailtyに群分けした。統計解析は,フレイルの状態の違いで各項目に差を認めるかをクラスカル・ウォリス検定とカイ2乗検定で実施した後に,有意な差を認めた項目に対して,ロジスティック回帰分析を行った。

【結果と考察】
 全被験者のフレイルの状態はrobustが16%,pre-frailtyが61%,frailtyが23%であった。フレイルの状態の違いにより有意な差を認めた項目は,下顎の残存歯数(P = 0.016),咀嚼問題の有無(P < 0.001),いつも食事を楽しんでいる(P = 0.001)であった。ロジスティック回帰分析の結果は,交絡因子を調整しても,下顎の残存歯数(OR: 0.546, P = 0.001),咀嚼問題有り(OR: 1.913, P < 0.001),いつも食事を楽しんでいる(OR: 0.59, P = 0.001)と全て有意であった。本研究の結果より,85歳以上の超高齢者においても,口腔の健康の維持は重要なことが示唆された。
(COI 開示:なし)(慶応義塾大学医学部 倫理委員会承認番号 20160297)