一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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一般演題(口演発表)

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一般口演8
介護・介護予防/教育

2024年6月30日(日) 14:20 〜 15:10 第4会場 (107+108会議室)

座長:園井 教裕(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科附属医療教育センター)、鈴木 史彦(奥羽大学歯学部歯科補綴学講座(高齢者歯科学))

[O8-4] 家族介護者の介護負担感と口腔保健指標との関連

○岸 さやか1,2、山口 哲史1、小宮山 貴将1、猪狩 洋平1、田中 恭恵1、伊藤 佳彦1、伊藤 有希1、内ケ崎 一徹1、黒田 雅博1、齋藤 貫1、佐藤 全弘1、関 大蔵1、大道寺 明也1、岡橋 美奈子2、阿部 吏芳2、小牧 健一朗3、成田 憲司2,3、小菅 玲3、服部 佳功1 (1. 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野、2. (一社)仙台歯科医師会 在宅訪問・障害者・休日夜間歯科診療所、3. (一社)仙台歯科医師会)

[目的]
 在宅療養において,家族介護者の役割は重要である。しかし,要介護者に対して行う様々な生活介助は家族介護者の介護負担感を増大させ,過重な介護負担は家族介護者の健康を害し要介護者の状態にも悪影響を与えることが報告されている。歯科領域では口腔ケア介助が介護負担感を増加させる可能性があり,その負担感は要介護者の口腔状態によって異なることが予想されるが,詳細は不明である。そこで本研究では,在宅要介護者の口腔保健指標とその家族が感じる介護負担感との関連を横断的に検討した。
[方法]
 対象は在宅訪問診療を利用する65歳以上の患者とその家族介護者とした。家族の介護負担測定には短縮版Zarit介護負担尺度日本語版を用い,負担過重の基準である13点を閾値として2群化した。要介護者の口腔保健指標には,歯数,義歯の有無,および口腔衛生状態(Oral Health Assessment Tool : OHAT)を中央値で2群化した変数を用いた。家族介護者の負担過重発生と介護者の口腔保健指標との関連について,年齢等の補正項目と共にロジスティック回帰分析を用いて検討した。歯数や義歯の有無と負担過重発生との関連が口腔衛生状態によって異なるかどうかを解析するために,現在歯数および義歯の有無とOHAT2群の交互作用についても検討した。
[結果と考察]
 解析の対象者は117名(83.9±7.6歳)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,「現在歯数とOHAT2群の交互作用」は有意(p=0.004)であり,認知症(p=0.036, OR=3.17),義歯あり(p=0.019, OR=4.30),OHATが5以上の場合の現在歯数(p=0.004, OR=1.20) が介護負担過重の可能性の増加と有意に関連していた。「義歯あり」のオッズ比は「認知症」のオッズ比よりも高く,義歯と介護負担過重との関連は想定以上に強い可能性がある。また,口腔衛生状態が良い場合は歯数と介護負担感は関連せず,口腔衛生状態が悪い場合のみ歯数が多いほど介護負担過重となる可能性が高まることが示唆された。本研究により,要介護者の歯数の多さや義歯の使用は家族介護者の負担過重と関連する可能性が示された。
(COI開示:なし)
(東北大学大学院歯学研究科研究倫理審委員会承認番号:2020-3-030)