一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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加齢変化・基礎研究(質疑応答)

2024年6月29日(土) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (大ホールC)

[P-36] 老化細胞除去薬投与による実験的歯周炎,糖尿病,動脈硬化症の病態改善効果

○小山 尚人1,2、大谷 有希1,2、加藤 慎也1,2、中村 卓1、尾﨑 友輝1、出分 菜々衣1、吉成 伸夫1,2 (1. 松本歯科大学歯科保存学講座 (歯周)、2. 松本歯科大学 大学院歯学独立研究科 健康増進口腔科学講座 口腔健康分析学)

【目的】
 近年,歯周炎(P),糖尿病(DM),動脈硬化症(AT)を代表とする生活習慣病に共通した病因としての老化が注目されている。現在,老化の基盤病態として慢性炎症所見が多数観察され,報告されている。この機序には,体内に蓄積する老化細胞が産生する細胞老化随伴分泌現象(SASP)が関与している。SASP因子は,生体の恒常性維持において重要な役割を担う一方で,周辺組織に慢性炎症を誘導し,加齢性疾患の発症,病態悪化に関与することが示唆されている。そこで我々は,加齢マウスを使用して実験的P,実験的DM,自然発症ATに対して老化細胞除去薬を投与し,病態改善効果を観察した。
【方法】
 C57BL6マウスとApoE(-/-)マウス129匹を実験に供した.これらのマウスをコントロール,P,DM,AT,P+DM,P+AT,DM+AT,P+DM+ATの8群に群分けした。さらに各群を老化細胞除去薬投与群と非投与群に分け,合計16群に割付けたマウスを72週(18ヶ月)齢まで飼育した。実験的Pは70週(17.5ヶ月)齢時から2週間,臼歯に絹糸を結紮し誘導,実験的DMはストレプトゾトシンとニコチンアミドを6週齢時に1日1回,2日間腹腔内投与し誘導,ATは40週(10ヶ月)齢頃より動脈硬化を自然発症するApoE(-/-)マウスを適用した。老化細胞除去薬投与群には56週(14ヶ月)齢時より,月に1回,4ヶ月間ダサチニブ®とケルセチン®溶液(D+Q)を経口投与した。評価は,歯肉凍結切片におけるSA-β-gal染色,血清ELISAによるIL-6の測定,µ-CT解析による歯槽骨吸収量,空腹時血糖値,動脈内腔の脂肪沈着率の計測を施行した。
【結果と考察】
 マウスは実験終了時129匹中86匹が生存していた。老化細胞は,すべてのD+Q投与群でSA-β-gal染色面積,IL-6濃度が有意に減少し,歯槽骨吸収量,血糖値も減少傾向であった。動脈内腔脂肪沈着率は有意に減少した。D+Q投与で老化マウスの老化細胞除去効果と各疾患の病態改善が観察されたことから,歯周病をはじめ糖尿病,動脈硬化症に対して老化細胞除去療法が効果的であることが示唆された。しかし各疾患の合併症ではD+Q投与で病態の改善傾向はみられたが,疾患単独群との有意な差はみられなかった。
(COI開示:なし)
(松本歯科大学動物実験委員会承認番号 No.344号)