一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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シンポジウム1
病院と在宅・施設をつなぐ地域一体型の口腔機能管理を考える

2024年6月29日(土) 09:40 〜 11:40 第1会場 (大ホールAB)

座長:古屋 純一(昭和大学大学院 歯学研究科口腔機能管理学分野)、大野 友久(浜松市リハビリテーション病院 歯科)

企画:病院歯科委員会・在宅歯科医療委員会

[SY1-1] 回復期・生活期を見据えた急性期における多職種協働による口腔健康管理

○鈴木 啓之1,2 (1. 昭和大学 大学院歯学研究科 口腔機能管理学分野、2. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【略歴】
2011年3月 北海道大学歯学部歯学科 卒業
2017年3月 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学修了
2017年4月 東京医科歯科大学歯学部附属病院 義歯外来 医員
2019年4月 東京医科歯科大学歯学部附属病院 義歯外来 特任助教
2022年4月 東京医科歯科大学病院 義歯科(高齢者歯科外来) 助教
2023年10月 昭和大学歯学部 口腔機能管理学部門 兼任講師
現在に至る

【認定医・専門医】
日本老年歯科医学会専門医
日本補綴歯科学会専門医

【受賞】
2022年 日本老年歯科医学会第33回学術大会 優秀課題口演賞
2018年 2017年度日本補綴歯科学会奨励論文賞
2017年 日本補綴歯科学会第126回学術大会 課題口演優秀賞

【学会】
日本老年歯科医学会 代議員 (理事長幹事)
【抄録(Abstract)】
 急性期においては,手術等に伴う心身への侵襲が大きく,意識障害や原疾患による口腔衛生不良,義歯不適合,咀嚼・嚥下機能低下などの口腔環境・機能の悪化が生じやすく,このような口腔機能障害は少なからず栄養摂取法の決定や患者のQOLなどに影響を与えると考えられる.実際,近年の研究から,急性期病院入院患者の多くは,口腔清掃や,舌・口唇などの軟組織,口腔乾燥の問題,義歯に関する問題を有する傾向が多く,摂食嚥下障害を認める割合が多いなど,口腔環境・機能が低下している傾向にあることが明らかになっていることからも,急性期から適切な口腔健康管理を実施していくことの必要性が示唆される.
 また,急性期病院入院患者の多くは,病状が安定した後,回復期リハビリテーション病院などへの転院や,自宅への退院という転帰をたどることとなる.回復期や,その後につづく生活期は,義歯製作などをはじめとする積極的な口腔健康管理を,腰を据えて実施できる環境であると考えられるが,著しく口腔環境や機能が低下した状態では,回復期や生活期における口腔健康管理を成功に導くことは困難である可能性が高い.そのため,回復期や生活期における効果的な口腔健康管理実現にむけた土台作りという観点からも,急性期における適切な口腔健康管理の実施は重要であるといえる.
 しかしながら,急性期病院の入院患者は病態の緊急度や重症度が高く全身状態が不安定な場合が多く,急性期病院の平均在院日数は約2週間と比較的短期間であることや,急性期病院において『歯科』という医療資源は限定的である場面も多いことから,急性期病院への入院期間中に必要十分な口腔健康管理を実施することは困難を伴う場合が多い.このような状況下で効果的な口腔健康管理を実現するためには,歯科医療従事者が単独で口腔健康管理を実施するのではなく,医師や看護師など多職種と協働しながら,入院患者に対する口腔健康管理を実施していくことが必要不可欠であると考えられている.
 本講演では,急性期病院をはじめとする多くの病院で実施されている多職種連携医療の中で,Nutrition support team (NST) および緩和ケアに焦点をあてて,我々がこれまで報告してきた急性期病院多職種連携医療対象入院患者の口腔環境・機能の実態や,多職種連携型の口腔健康管理の効果について紹介しつつ,『歯科』という医療資源が限定的な場面も多い急性期病院において,それぞれの入院患者に対する必要な口腔健康管理方法を選択と,効果的かつ効率的な口腔健康管理の実現するための指標や,さらには限られた医療資源である『歯科』と急性期病院を繋げるための一つの方策を紹介し,急性期病院における適切な口腔健康管理のあり方を検討したいと考えている.