一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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シンポジウム » [シンポジウム4(スポンサードシンポジウム)] 褥瘡患者への対応 ~多職種連携に必要な疾患・病態への理解を深める~

シンポジウム4(スポンサードシンポジウム)
褥瘡患者への対応 ~多職種連携に必要な疾患・病態への理解を深める~

2024年6月29日(土) 14:20 〜 16:00 第1会場 (大ホールAB)

座長:渡部 芳彦(東北福祉大学 健康科学部 医療経営管理学科)、岩佐 康行(原土井病院 歯科)

企画:地域包括ケア委員会
共催:ニュートリー株式会社

[SY4-3] 在宅医療における褥瘡と歯科衛生士のかかわり

○金子 信子1 (1. 宝塚医療大学保健医療学部口腔保健学科)

【経歴】
1992年 湘南短期大学(現 神奈川歯科大学短期大学部)歯科衛生学科卒業,聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院歯科 勤務
1994年 関東歯科衛生士専門学校(現 厚木総合専門学校) 勤務
2001年 複数の歯科診療所 非常勤勤務
2008年 認定歯科衛生士として複数勤務
2012年 医療法人おひさま会 勤務
2018年 なにわ歯科衛生専門学校所属平成野田クリニック出向
2024年 宝塚医療大学保健医療学部口腔保健学科講師 現職

【認定資格】
・公益財団法人日本歯科衛生士会 認定歯科衛生士 在宅療養指導・口腔機能管理
・公益財団法人日本歯科衛生士会 認定歯科衛生士 老年歯科
・一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会 認定士
・NPO法人摂食介護支援プロジェクト認定 嚥下トレーナーアドバンス歯科衛生士
・一般社団法人終末期ケア協会 終末期ケア専門士
【抄録(Abstract)】
褥瘡とは「身体の一部分に長時間持続的な力がかかり,皮膚の血流が乏しくなり発生する虚血性壊死のこと(老年歯科医学用語辞典)」である.在宅で過ごしている要介護高齢者のうち,褥瘡有病率は2016年の時点で1.9%という調査結果であった.年齢は75歳以上の高齢者に多く,発生部位は仙骨部,坐骨結節,踵部,大転子部,尾骨部となっている.褥瘡予防は身体の一部分の血流が乏しくならないよう,体位変換や姿勢の設定における圧迫・ずれ力の排除,栄養管理,スキンケアなどが挙げられる.歯科の訪問診療において,介入時にすでに褥瘡が発生している場合は,在宅医・看護師からは褥瘡の発生時期,状態,経過など,ケアマネジャーからすはでに介入している職種はどのような対応をしているのかを確認する.介入後に発生した褥瘡は,今後の治療および圧迫・ずれ力の排除方法について情報を積極的に得るようにし,訪問したときの姿勢設定に対応しなくてはならない.また,栄養状態の把握を再評価する必要もある.褥瘡の経過によって圧迫・ずれ力の排除方法は変化していくため,姿勢設定の変化に都度対応していく必要がある.しかしながら在宅医療においては病院と異なり,同時刻に他職種が訪問することがほぼないため褥瘡に対する職種間での認識の温度差や姿勢設定の徹底管理が行いにくい.また,圧力分散させるアイテムも病院に比べて少ないため,手元にあるクッションやバスタオルなどを駆使したとしても圧迫・ずれ力の排除の姿勢設定が限界なこともある.自ら行った姿勢設定が本当に圧迫・ずれ力の排除になっているのか,疑問に思いながら行うこともしばしばである.さらに褥瘡が悪化したとき,自分が行っていた方法が間違っていたのではないかと思うこともある.歯科衛生士はこれらの対応を行いつつ,褥瘡が悪化しないよう訪問時に口腔健康管理実施時の姿勢や実施時間を考慮し,能率良く行うよう様々な工夫を行っている.例えば口腔内を衛生に保つための衛生物品の工夫による時間短縮,手技の向上は不可欠である.口腔健康管理に加えて摂食嚥下リハビリテーションも実施する場合はさらに時間がかかるため,圧迫・ずれ力が発生していないかその都度の姿勢を確認し,必要であれば体位交換を行う必要もある. さらに栄養管理をふまえた口腔健康管理の実施,経口摂取の評価や提案も担う.このあたりの介入を積極的に行うために,能率の良い栄養摂取が行える提案ができるようにしたい.このように在宅医療における褥瘡治療および予防対策は,訪問している職種が統一した認識を持ち,圧迫・ずれ力排除の姿勢の維持,栄養管理が不可欠であるが,訪問時間内での対応はそれぞれの職種が苦慮するところと推察する.本シンポジウムでは皆さんがどのような工夫を行っているのか,具体的な例をもとに,ディスカッションできれば幸いである.