一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム » [シンポジウム6] R6年改定は私たちに何をもたらすのか?

シンポジウム6
R6年改定は私たちに何をもたらすのか?

2024年6月29日(土) 13:10 〜 14:10 第3会場 (中ホール)

座長:菊谷 武(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

企画:社会保険委員会

[SY6-2] 令和6年度診療報酬・介護報酬改定に向けた社会保険委員会の活動とその成果

○猪原 健1 (1. 医療法人社団敬崇会 猪原[食べる]総合歯科医療クリニック)

【略歴】
2005年 東京医科歯科大学歯学部 卒業
2009年 東京医科歯科大学大学院 顎顔面補綴学分野 修了(歯学博士)
2006年~2010年 東京大学先端科学技術研究センター 人間情報工学分野 協力研究員
2010年 日本大学歯学部 摂食機能療法学講座 非常勤医員
2010年~2011年 カナダ・アルバータ大学リハビリテーション学部 Visiting Professor留学
2011年 敬崇会 猪原歯科医院(現・猪原[食べる]総合歯科医療クリニック)副院長
2015年 脳神経センター大田記念病院に歯科部門を立ち上げ、歯科非常勤医(兼務・現職)
2020年 敬崇会 猪原歯科・リハビリテーション科(現・猪原[食べる]総合歯科医療クリニック)理事長
2021年 グロービス経営大学院 修了(MBA経営学修士(専門職))

東京医科歯科大学、岡山大学、大阪歯科大学 各非常勤講師
日本老年歯科医学会 評議員、社会保険委員会
日本在宅医療連合学会 理事、保険委員会・多職種委員会
日本顎顔面補綴学会 評議員、地域医療支援委員会・広報委員会
全国在宅療養支援歯科診療所連絡会 理事など
【抄録(Abstract)】
我が国における人口の大きなボリュームゾーンである団塊の世代が後期高齢者となり、要介護高齢者の数が激増するなど様々な課題が顕在化する2025年問題まで、あと1年を切った。最近ではその先の、高齢化率が1/3を超える2035年問題にも目を向けて、持続可能な医療・介護保険制度への再構築が求められている。もちろん、歯科分野も例外ではなく、歯の形態の回復を主軸とする治療中心型から、重症化予防や口腔機能管理を主軸とした管理・連携型への転換が必要であり、高齢者の自立を促し、各々がより健康的な人生を歩めるよう支えることが重要とされている。
私たち日本老年歯科医学会社会保険委員会は、上記の実現に向けて、医療保険制度の根幹を支える診療報酬体系に対し、実務家専門職としての意見を反映させることの重要性を認識してきた。特に、学会員の約1/3を占める病院歯科、特に口腔外科を主体としない回復期病院や療養病院における歯科部門は、地域包括ケアシステムを支える重要な担い手であるにも関わらず、これまでの診療報酬改定においてほとんど顧みられることがなく、ほぼ忘れ去られた存在であったと言っても過言ではない。そのため、この度の改定では、病院歯科に対する適切な評価を得ることを第一の目標として掲げ、病院歯科委員会の先生方に検討会メンバーとして加わっていただき、活動を行った。
また、令和6年度改定は、2年に1度の医療保険に加え、3年に1度の介護保険も併せた同時改定であり、在宅医療における医療と介護の給付調整も含めて、働きかけを行うことが必要であると考えた。第34回大会の社会保険委員会報告において発表した通り、「あるべき姿の提案に向けたワークショップ」を2022年10月・11月に計6回開催し、歯科医療職だけでなく、看護・リハビリ・栄養・介護の分野の有識者からも意見を聴取し、活動を行った。
その後、ワークショップで得られた結論を基に、厚生労働省中央社会保険医療協議会医療技術評価分科会に対し、医療技術評価・再評価の提案書を12項目にわたって提出した。また、関連学会・団体等との協働や要望・折衝を行い、約3年にわたる総力を挙げての取り組みを行った。
その結果、回復期病院に対する地域歯科診療支援病院歯科初再診料の施設基準の緩和、回復期口腔機能管理の新設、そして在宅療養支援歯科病院制度の創設などを実現した。また医療技術評価提案書についても、がん看取り時の頻回訪問、難病、認知症、歯科衛生士複数名訪問、オンライン診療、口腔バイオフィルム感染症、口腔機能低下症などに対する評価の新設・引き上げが行われた。これらに尽力された方々には、この場を借りて感謝を申し上げたい。
本発表では、上記の活動について報告を行い、またまだ解決されていない問題にどのようにアプローチすべきかについて、ディスカッションを行いたい。