第14回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

指定演題

指定演題3
救急外来の安全管理

2018年7月1日(日) 13:40 〜 14:40 第5会場 (2階 平安)

座長:坂田 久美子(愛知医科大学病院), 座長:石井 恵利佳(獨協医科大学埼玉医療センター)

[指定3-1] 救急外来で待ち時間に転倒・転落した事例を振り返って

和田 孝 (大垣市民病院 救命救急センター 救急外来)

【はじめに】
患者の高齢化や在院日数の短縮に向け在宅医療へ移行することで、外来通院に介護の必要な患者が増加している。救急外来においても転倒・転落など患者安全が脅かされる状況にある。過去2年間における転倒・転落の発生件数は8件であった。今回、救急外来を受診して経過観察中に転倒・転落した事例をもとに今後の対策について報告する。
【事例】
1.80代男性、主訴:ふらつきと嘔吐、経過:22時入浴後にふらつきと嘔吐を認めたため救急要請する。観察室で家族付き添いのもと点滴治療となった。1時間後トイレに行こうと自らストレッチャーから降りる際に転倒する。このとき家族は、電話連絡のため席を外していた。
2.40代女性、睡眠薬を大量服薬して救急搬送となる。統合失調症で近医に通院中である。JCS100、家族付き添いのもと点滴治療で覚醒するまで様子観察となる。4時間後、突然覚醒してストレッチャーの柵を乗り越え床に転落する。家族は付き添っていたが、対応できなかったと言う。
【考察】
事例1:多くの先行研究において、転倒・転落の要因で多いのが排泄行為に関連した事象であり、危険予知の向上に努める必要がある。対策として、(1)「転倒・転落アセスメントスコア」をもとに危険度に応じた予防策を講じる、(2)家族に席を外す場合は、看護師に伝えるように説明をする、(3)家族がいない時は、離床検知装置を考慮する。
事例2:服薬した薬剤や量に応じては救急外来で覚醒を待つケースがあるが、いつ覚醒するか予測できないことが危険である。付き添い家族に協力を依頼するとともに、突然覚醒する事を予知して、(1)柵が高いストレッチャーを選択する、(2)離床検知装置の使用、(3)身体的拘束が必要か協議する、(4)家族に転落の説明と協力要請する、を対策として周知していく。
法的側面から転倒の可能性のある患者に対しては、施設側には回避手段をとる義務が生じる。対策がなされること無く転倒・転落による傷害が発生した場合は、安全配慮義務違反の責任が問われる。医療裁判では、「証拠」により「事実」を認定し、「過失」などの要件を満たすかが争われる。いかに事実を記録に残すかが重要になる。当院では、転倒・転落の予防策を講じたら、容易に看護記録に記載できるようにテンプレートを作成した。今後は、監査を行い記載率の向上を図っていく。
【結語】
国際患者安全目標(IPSG)では、「転倒・転落による患者の傷害を低減するための対策を実施している」という項目が掲げられている。これは、入院患者のみならず外来患者にも適用される。当院は、入院患者に対してはマニュアル化して予防策を講じているが、外来では個々の経験値から対応しているのが現状である。今後は、勤務開始時にペアナースとともに危険予知ラウンドを実施して情報共有する。また、病棟との連携の一環として、救急外来から転倒・転落の評価と予防策を引き継ぐ必要があると考える。