第15回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

招聘講演

[IL2] クリティカルケア看護の展望

2019年6月16日(日) 13:10 〜 14:10 メイン会場 (B1F フィルハーモニアホール)

演者:道又 元裕(国際医療福祉大学成田病院準備事務局)
座長:江川 幸二(神戸市看護大学)

13:10 〜 14:10

[IL2] クリティカルケア看護の展望

○道又 元裕1 (1. 国際医療福祉大学成田病院準備事務局)

キーワード:クリティカルケア看護

 日本の医療制度は、国民を支える経済状況が概ね安定、成長期に入りつつ、一方では医療費の抑制政策に転じ、これ以上の医療費投入は限界をむかえています。その結果として医療の崩壊が発生すると言われています。よくメディアで取り上げられている2025年問題がそれであって、それにどう対応してゆくかが大きな課題となっています。
 少子化、高齢化、超高齢化社会が進み人口の減少化へと変化、また、慢性疾患の増大、同時に少しずつ変わってきている社会システム、人々の価値観、そして、それとともに変化している医療政策と医療界、保健、医療、福祉のなかで看護、看護を生業にする看護師の仕事は、どう変わろうとしている、変わってゆくのでしょうか。どんな看護が求められ、自発的になにを実践してゆくのでしょうか。
 国民にとって意義のある専門家として存在してゆくためには、真摯に考え、柔らかく賢く変わっていかないとですね。
 我が国の疾病構造も変容を遂げてきています。その中で、死亡順位は、悪性新生物(27.9%)、心疾患(15.3%)、脳血管障害(8.2%)、老衰(7.6%)、肺炎(7.2%)、不慮の事故(3%)、誤嚥性肺炎(2.7%)となっていますね。
 この辺から類推すると、悪性新生物(がん)は減り、それ以下の上位死亡が台頭をなしてくることでしょう。つまり、がんそのものによる死亡は減り、それ以外の死亡、特に肺炎がぐ~んと上がってきそうです。一方で、手術方法による外科医療は、内科的療法に置き換わってくると思われます。
 つまり、医療者の立場から提供している医療体制から医療を受ける人々のクオリティを重きにおいた医療体制へと変換してゆく流れで進んでゆくでしょう。
 そこで、クリティカルケア看護は、また、その領域に生きる看護の人々は、今後どうあるべきかを考えることも重要です。働き方改革や昨今の各医療技術者のタスクシフティング、タスクシェアリング、重複型の医療サービス提供などを含めて、医療のあり方が根本的に問われはじめています。名ばかりではない、実のあるチーム医療の実践が今後の医療サービスの行方とあり方を握っていることは間違いありません。そのメンバーには、医療側に都合が良い人的資源の配置するような体制ではなく、医療を受ける人々にとって有益な様々な専門家が縦横無尽に参画し、持っている能力をいかんなく発揮することが当たり前なチーム医療を形成することが重要なのでしょう。
 そのためにやるべきことは、真の専門性を発揮する人的資源の育成とそれを繋ぐ体制の構築、チーム医療メンバーとして医療を受ける人々とその家族の養成、ハイテクノロジーとヒューマニズムの調和する文化の醸成、進化するAIの効果的活用、加えてまだあるヒエラルキーの破壊など、いろいろあります。
 したがって、クリティカルケア看護の展望は、これらの趨勢を幅広くとらえつつ、グローバルな観点からの情報収集と活用は勿論のこと、専門性を深く追求する一方でクリティカルケア領域以外でも起用される多様な人材育成が重要です。また、有益なデバイスの開発に関わる看護理工的活動を行ってゆくことも望まれます。
 本講演では、幾つかの視点から私信を中心にクリティカルケア看護における些かの展望について参加者の皆様と共学させて頂きます。