第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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教育講演

[EL5] 再生医療の倫理ー求めたい看護の存在と力、生命倫理の視点から-

演者:有江 文栄(国立精神・神経医療研究センター、上智大学生命倫理研究所、文部科学省研究振興局)

[EL5] 再生医療の倫理ー求めたい看護の存在と力、生命倫理の視点から-

○有江 文栄1,2,3 (1. 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 臨床研究支援部 倫理相談・教育研修室 、2. 上智大学生命倫理研究所、3. 文部科学省研究振興局 ライフサイエンス課 生命倫理・安全対策室)

Keywords:再生医療 、看護、生命倫理、意思決定

「再生医療」、この言葉は今では広く一般に浸透してきた。この20年、我が国では再生医療を推進するために官民挙げて取り組んできた。その甲斐あって再生医療は基礎研究から臨床応用へと進み、今ではiPS細胞を用いた加齢黄斑変症やパーキンソン病等の臨床研究も開始され、それらは着実に成果を上げつつある1)。再生医療と一口に言ってもその範囲は広く、第3種再生医療に分類される比較的リスクの低い自己体細胞加工物を用いたものから、第1種のES細胞やiPS細胞等を用いたものまである2)。対象となる疾患も様々で、再生医療に人々は多大な期待を寄せ、この技術に一縷の望みをかけて臨床研究に参加している患者もいる。

安全性と有効性を検証しつつ慎重に進められている再生医療であるが、エビデンスが十分にあるといえないような医療が、自由診療で提供されているケースや、幹細胞を使用した新規性の高いものでは有害事象も報告されている1)。このような再生医療においては、適切で十分な説明に基づいた患者の理解と判断が重要になってくるが、再生医療を受ける患者の理解と医療者(研究者)側が患者に伝えた、伝わったと思っていることに齟齬があったり、患者の期待と医療者(研究者)側の期待する効果にギャップがあったりする。再生医療を受ける患者は難病であることが多く、それ故に期待も大きくなる傾向にある1),3)。このような状況の中で、再生医療を受ける患者と再生医療を提供する医療者のコミュニケーションが問題となり、医師だけではなく看護師の役割も重要になってくる。とりわけ患者や家族の意思決定の過程では、看護の存在と力が求められる。

本講演では、生命倫理、とりわけ医療倫理・研究倫理の視点から、再生医療において看護は何を期待されているのか、看護の存在と力についてお話したい。



参考文献

1.有江文栄(2018):再生医療の倫理-期待される看護の役割と責任-.日本移植・再生医療看護学会誌,13(1),3-11.

2.「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」の取扱いについて(平成26年10月31日医政研発1031第1号厚生労働省医政局研究開発振興課長通知)

3.有江文栄.「再生医療・研究における倫理 再生医療等委員会に提出する際のポイント」講演資料、2016年8月27日第7回細胞治療研究会富士ソフト株式会社