第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

[O10] その他

[O10-1] 食道がん患者が捉えた術前指導-術後患者の語りから-

○阿久澤 優佳1,2、桒子 嘉美3、高谷 真由美4,2 (1. 順天堂大学大学院医療看護学研究科 博士後期課程、2. 順天堂大学医療看護学部、3. 富山県立大学看護学部、4. 順天堂大学大学院医療看護学研究科)

キーワード:術前指導、食道がん

【目的】
 食道がん患者が、術前に受けた指導をどのように捉えているのか術後に振り返ってもらい、術前指導の実態を明らかにすることを目的とする。
【方法】
 研究対象:開胸腹または腹腔鏡下手術を受け、退院が決定し状態が安定している食道がん患者。調査期間:2018年9月~12月。データ収集方法:対象者1人につき1回、30分程度①どのような術前指導を受けたか②術前指導はどのような意味を持ったか③術前指導の内容を遂行する上で支えとなったこと④振り返って術前指導にのぞむもの について、半構造化面接を行った。分析方法:質的帰納的に分析した。倫理的配慮:所属大学倫理委員会及び対象施設倫理委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】
 研究参加者は8名(男性5名、女性3名)であり、年齢は60歳代6名、70歳代2名であった。対象施設における術前指導は、担当医師と外来看護師、病棟看護師により、手術日程決定日から手術前日まで断続的に行っている。受けた術前指導は、器具を使用した呼吸訓練や口腔内の清潔等が挙げられた。これに対し、研究参加者より得られた86のコードから、《考える余裕がないから医療者に委ねる》《術後という未知の世界に対して、なにか一部を知ることが出来る》《不安なことや質問したいことを医療者と話す機会が無い》《不親切な説明に憤り、説明方法の改善を望む》《診断直後はショックで記憶に残らない》等の20のサブカテゴリーと、【専門的知識を有する医療者に委ねるしかない】【患者自身が持つ意思や経験から、必要性を汲み取る】【指導の存在自体は否定しないが、充分ではない】【必要性が伝わってこない】の4のカテゴリーが抽出された(表1)。
【考察】
 本研究の結果から、医師および看護師が実施している現状の術前指導では、患者には術前訓練の必要性が伝わっておらず、患者側が求めている援助が充分に提供出来ていないことが明らかとなった。
術前の患者は、分からないことが分からない状況の中、【専門的知識を有する医療者に委ねるしかない】と捉えていることから、医学的エビデンスに基づいた正確な術前指導を行う必要がある。また、【指導の存在自体は否定しないが、充分ではない】や、術前訓練の【必要性が伝わってこない】と捉えていることから、必要性の伝わる指導を行うと同時に、術前患者の不安軽減に繋がる術前指導プログラムについて検討する必要があると示唆される。
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