第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O4] 高度実践・家族看護

[O4-1] ICUに勤務する熟練看護師が実践する家族看護

○菅原 真寿美1、熊代 妙子1、藤原 光恵1、杉之原 愛美1、澤田 由美2 (1. 岡山労災病院、2. 山陽学園大学)

Keywords:クリティカルケア、ICU、熟練看護師、家族看護

【目的】
急性期病院ICUに勤務する熟練看護師が実践する家族看護を明らかにし、質の高い看護を提供するための示唆を得る。
【方法】
研究協力の同意が得られた看護師経験年数10年以上の看護師(以下“熟練看護師”)を対象とし、研究者らが作成した半構造化面接により得られた家族看護に関する語りを質的帰納的に分析した。分析の妥当性・客観性を保つために、研究者間で意見の一致性を確認し、質的研究の実践者からスーパーバイズを受けた。研究者が所属する看護研究倫理審査会の承認を受けた後、対象者に研究の目的、方法、匿名性の保証、データの保管方法(IDで管理)と破棄、結果の公表について文書と口頭で説明し、自由意思による研究協力者を募った。面接の場所や日時は対象者の希望に沿い、語りたくない事を無理に語る必要は無い事、面接の中断・中止も可能である事を説明し、面接による苦痛を伴わないよう配慮し、個室で実施した。
【結果】
対象者は8名、看護師経験年数は平均18年、ICU経験年数は平均10年(10.375年)であった。熟練看護師の経験と実践知を用いた介入として、【家族の力を引き出す関わり】【現実を受け入れるための関わり】【家族との関係を築くための関わり】が抽出された。以下、大カテゴリを【 】、中カテゴリを[ ]とする。【家族の力を引き出す関わり】は、家族の強みを支援する看護を意味し、[培ってきた専門的知識と技術によるケアリングを実践する][家族が患者と一緒に過ごせる環境をつくる][家族にケア参加を促す事で患者・家族・看護師が一つになる]で構成されていた。患者と過ごしたい家族の気持ちを汲み取り、家族がケアに参加出来る環境を整える介入が明らかになった。【現実を受け入れるための関わり】は、事実を伝える事で現実を受け止め、気持ちを整えるための支援を意味し、[亡くなったあとの心残りが少なくなるように関わる][ありのままの家族を受け止め寄り添う] [厳しい状態であっても最善の介入が出来るよう関わる]で構成されていた。過去の看取りの経験から悔いが残らない関わりを意識し、家族をありのままに受け止め、家族が歪みのない知覚を持ち現実を受け入れるための介入が明らかになった。【家族との関係を築くための関わり】は、良好な人間関係の構築を意味し、[意図的に関わる事で家族ケアに繋げる][家族との距離を見極め対応や言葉遣いに配慮する][家族が患者の状況を理解出来る情報提供を行う][入室期間が介入への意識の差を生む]で構成されていた。困難さを感じながらも、関わる事で関係を築く事が出来ると信じ、日々の心のこもったきめ細やかな介入が明らかになった。
【考察】
熟練看護師はこれまでの経験と実践知を駆使する中でケアリングを用い、厳しい状況であっても心残りが少なくなるよう最善の介入を模索し、家族が現実を受け入れられるように向き合っていたと考える。死に至るまでに時間的な猶予のないクリティカルケア領域では、家族が死を納得し受け入れる事は困難を極め、精神的にも危機的状態に陥りやすくなる。熟練看護師は、家族との距離を見極め、配慮し、家族が理解できる方法で事実を伝え、意図的に関わり続ける事で信頼関係の構築に向けてアプローチしていた。【家族との関係を築くための関わり】【家族の力を引き出す関わり】【現実を受け入れるための関わり】は相互に作用しており、良好な人間関係の構築を礎として家族の強みを支援し、家族の気持ちを整えるための看護が展開される事によって、看護の質の向上に繋がる事が示唆された。