[O6-2] ICU看護師が捉えた人工呼吸器装着患者のセルフケア
キーワード:セルフケア
はじめに:昨今,集中治療領域では浅い鎮静管理が推奨され,人工呼吸器装着患者は身の回りのことを自分でやりたいと思いながらも,自ら動くことが許されていないと感じている(野口,井上,2016).そこで本研究は,人工呼吸器装着患者のセルフケアをICU看護師がどのように捉えているかを明らかにすることを目的とした.
研究方法:対象施設において人工呼吸器装着患者の看護経験が5年以上の看護師を対象に半構成的面接を行なった.面接内容は,基本的属性と人工呼吸器装着患者のセルフケアをどのように捉えているかなどで構成した.分析は,録音データから逐語録を作成し,Berelson(1952/1957)の内容分析を参考に,言及事項を分析した.意味内容をコード化,サブカテゴリ化,カテゴリ化することで概念の抽象度を上げ,コードの比率を求めた.全過程において複数の大学教員からスーパーバイズを受けた.なお,本研究はA大学大学院看護学研究科博士前期課程の課題研究として,倫理審査会の承認(研究倫理審査結果通知No.12②)を得て実施した.
結果:対象者6名,合計224分の語りから,184コードを抽出し,35サブカテゴリ,15カテゴリを生成し,意味内容から〔患者の状況〕,〔医療者の状況〕,〔セルフケアの意義〕に分類した.〔患者の状況〕は【全身状態により左右される】【治療により左右される】【できるかどうかは患者の背景と意欲による】【患者は何ができて何をしたらいいのかわからない】【患者は自分の置かれている状況を理解しようとする】の5カテゴリ,〔医療者の状況〕は【患者の意思に沿ってできそうなことをみつけて支援することが必要】【危険を避けるために阻害される】【医療者の価値観や捉え方の違いにより左右される】【マンパワーの調整により支援が可能になる】【基準がないことにより支援が難しい】【ICUでは患者が何をできるのか意識しないと気づけない】【患者の状況理解を支援することで可能になる】【看護師が過剰に代行することにより阻害される】の8カテゴリ,〔セルフケアの意義〕は【患者ができることがあるという気持ちを持つことに繋がる】【セルフケアは患者の今後の生活に影響を及ぼす】の2カテゴリであった.なお,〔医療者の状況〕を捉えたカテゴリが全体の65.8%を占めていた.
考察:医療者の状況を捉えたカテゴリが最も多く抽出されており,全身状態が改善しない状況では看護師が患者の主体性を引き出すことの難しさを示していると考えられた.そのような中でも,ICU看護師は人工呼吸器装着患者のセルフケアが精神状態や予後に関連する活動であると考え,支援が必要なものとして捉えていた.しかし,セルフケアを支援するための明確な基準がないことや,マンパワーの不足,医療者の捉え方などの様々な要因によって阻害されることが示唆された.そのため,ICUで人工呼吸器を装着している患者のような重症患者の主体性を引き出し,セルフケアを促進することが回復過程に与える影響を評価するとともに,看護師が介入の可否を判断し,セルフケアを促進するための具体的な支援のあり方を示していく必要がある.
結論:ICU看護師は,人工呼吸器装着患者のセルフケアに難しさを感じながらも,予後に関連した重要な活動であると捉えて支援していることが明らかになった.
研究方法:対象施設において人工呼吸器装着患者の看護経験が5年以上の看護師を対象に半構成的面接を行なった.面接内容は,基本的属性と人工呼吸器装着患者のセルフケアをどのように捉えているかなどで構成した.分析は,録音データから逐語録を作成し,Berelson(1952/1957)の内容分析を参考に,言及事項を分析した.意味内容をコード化,サブカテゴリ化,カテゴリ化することで概念の抽象度を上げ,コードの比率を求めた.全過程において複数の大学教員からスーパーバイズを受けた.なお,本研究はA大学大学院看護学研究科博士前期課程の課題研究として,倫理審査会の承認(研究倫理審査結果通知No.12②)を得て実施した.
結果:対象者6名,合計224分の語りから,184コードを抽出し,35サブカテゴリ,15カテゴリを生成し,意味内容から〔患者の状況〕,〔医療者の状況〕,〔セルフケアの意義〕に分類した.〔患者の状況〕は【全身状態により左右される】【治療により左右される】【できるかどうかは患者の背景と意欲による】【患者は何ができて何をしたらいいのかわからない】【患者は自分の置かれている状況を理解しようとする】の5カテゴリ,〔医療者の状況〕は【患者の意思に沿ってできそうなことをみつけて支援することが必要】【危険を避けるために阻害される】【医療者の価値観や捉え方の違いにより左右される】【マンパワーの調整により支援が可能になる】【基準がないことにより支援が難しい】【ICUでは患者が何をできるのか意識しないと気づけない】【患者の状況理解を支援することで可能になる】【看護師が過剰に代行することにより阻害される】の8カテゴリ,〔セルフケアの意義〕は【患者ができることがあるという気持ちを持つことに繋がる】【セルフケアは患者の今後の生活に影響を及ぼす】の2カテゴリであった.なお,〔医療者の状況〕を捉えたカテゴリが全体の65.8%を占めていた.
考察:医療者の状況を捉えたカテゴリが最も多く抽出されており,全身状態が改善しない状況では看護師が患者の主体性を引き出すことの難しさを示していると考えられた.そのような中でも,ICU看護師は人工呼吸器装着患者のセルフケアが精神状態や予後に関連する活動であると考え,支援が必要なものとして捉えていた.しかし,セルフケアを支援するための明確な基準がないことや,マンパワーの不足,医療者の捉え方などの様々な要因によって阻害されることが示唆された.そのため,ICUで人工呼吸器を装着している患者のような重症患者の主体性を引き出し,セルフケアを促進することが回復過程に与える影響を評価するとともに,看護師が介入の可否を判断し,セルフケアを促進するための具体的な支援のあり方を示していく必要がある.
結論:ICU看護師は,人工呼吸器装着患者のセルフケアに難しさを感じながらも,予後に関連した重要な活動であると捉えて支援していることが明らかになった.